87.素材リスト

 ベルゼの紹介も終わり、場の空気は程よく暖まった。

 時間が経過していき、人ごみが増えたクエストボードへと意識が向き始める。

 俺は逸れつつある意識を戻そうと、わざとらしく咳払いをして話をする。


「おほんっ! そろそろ本題に入らせてもらうよ」


「あっ、そうだった。話って何なの?」


 キリエが思い出したように尋ねてきた。

 俺は待ってましたと言わんばかりにニヤっと笑い、バッグから紙を取り出す。

 昨日の晩から深夜まで、異様なテンションで書きなぐった紙だ。

 それを手に持ちながら、見せる前に説明をする。


「ミア、キリエ。昨日の戦闘で破損した装備だけど、一応修繕が終わったよ」


「ホントか! さっすが早いな!」


「ありがとう、シンク」


「どういたしまして。で、修繕ついでに装備を強化できないかなって考えたんだ」


「強化? もしかして、新しい能力をつけてくれたのか!」

 

 キリエは興奮気味に話しながら、身を乗り出す。

 先走ってテンションを上げている。


「いや、まだだよ。あーいや、キリエの槍には一つだけ能力を付与したよ」


「やったー! どんなどんな?」


「伸びればいいなーって、前に言ってただろ? 魔力で伸縮するようになったぞ」


 俺が簡単に説明すると、キリエは目をキラキラと輝かせていた。

 やっぱり自分の武器の話だとワクワクするよな。

 すると、ミアがソワソワしながら尋ねてくる。


「あ、あの! 私の剣にも新しい能力がついたり……とか?」


「そこが本題だ。ミアの剣には、すでに再生能力が付与されている。俺のスキルだと、一つの能力を持つ魔道具なら、魔力を消費するだけで作成可能だ。ただし、二つ以上の能力とか、複雑かつ強力な能力をもつ魔道具には、それ相応の素材が必要なんだよ」


「じゃあ……私の剣には無理ってことか……」


 しょぼんとするミア。

 少し早合点だと思いながら、俺は持っていた紙を机に置く。


「今はまだ無理だな。そこで――これからここに書いてある素材を集めに行きたいと思う」


 紙を開き、全員に見えるようにする。

 そこにはこう書かれていた。


 雷獣の爪         一個

 グリフォンの羽      一個

 ゴーレムの心臓      二個

 サンドワームの皮     五個

 ポイズンスネークの毒袋  一個

 氷結晶          五個

 イレーヌ鉱石       二個

 エアリアル草       五個

 聖なる者の髭       一個

 雷のコア         一個

 炎のコア         一個

 水のコア         一個

 風のコア         一個

 氷のコア         一個

 光のコア         二個


 書き出された素材を見て、唖然とする一同。

 キリエが驚きながら言う。


「うわっ! めちゃくちゃ多いじゃん!」


「一応これでも絞ったんだぞ?」


 能力なんて足そうと思えば限りがない。

 そこで今回は、各人の個性にあわせた能力を考え抜いた。

 必要な素材も厳選しているつもりだ。

 あとは武器だけじゃなくて、今後必要になるであろう装備の素材も書き出してある。

 

 四人はしばらく紙に釘付け状態だった。

 見慣れない素材もあるようで、これはなんだと話が飛び交う。

 そして、話を区切ってミアが俺に尋ねる。


「ねぇシンク、結局どんな能力をつけるの?」


「それは出来てからのお楽しみだ」


「えぇー何それ! 気になるよ~」


「そっちの方がおもしろくないか?」


「良いんじゃないか? 何かテンション上がってきたぞっ!」


 キリエはすでに乗り気だ。

 ユイも声には出してないけど、表情から期待が読み取れる。

 ミレイナは、こんなに集められるのかとちょっぴり不安そうだ。


「どうせいろんな場所を回るんだ。このくらいの目的があったほうが良いだろ?」


 俺がそう言うと、全員がこくりと頷いた。

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