79.土地選び

 夕方まで続いて意見の出し合いは、結局翌日にまで持ち越した。

 朝早くに同じ喫茶店で集まり、足りないことはないかチェックする。

 そして、昼ごはんを食べる前に、書き込んだ紙をもってアンディー道具屋に向かった。


「いらっしゃい! おうシンクたちか」


「こんにちは」


 アンディーの視線が俺の持っている紙に移る。


「まとまったみたいだな」


「はい」


 俺は紙をアンディーに手渡した。

 アンディーは貰った紙に目を通す。

 数秒待って、顔をあげて俺たちに言う。


「だいたい大丈夫そうだな。それじゃ俺のほうで設計は進めておくぞ」


「よろしくお願いします」


「はいよ。あーそうだ。それと並行して土地も探しとくから、候補が見つかったら連絡するぞ」


「はい、待ってますね」


 三日後――


 土地の候補が見つかったと、アンディーから連絡を受けた。

 俺たちは揃ってアンディー道具屋へ向かう。

 すると、店の前にアンディーが待っていた。


「おう来たか! このまま案内してやるよ」


「えっ、店はいいんですか?」


「心配ない。今日は臨時休業だ」


「えっと……まさか俺たちのために?」


 申し訳ないという気持ちが表情に出る。

 それを感じ取ったのか、アンディーは笑いながら言う。


「そんな顔すんな! なーに、ちゃんと代金はぼったくるからな。覚悟しとけよ」


 アンディーなりの気遣いを感じる。

 俺たちは何度もお礼を言って、彼の案内で移動する。

 道中で聞いた話では、候補として見つかったのは三箇所らしい。

 一箇所目に向かっている途中、俺のとなりを歩いていたキリエがぼそりと言う。


「土地なんてどこも一緒じゃないの?」


 それに反応したアンディーが答える。


「一緒なわけあるか。立地は大事だぞ? 生活に直結するからな」


「ふぅ~ん」


 この反応はあまり理解していないな。

 周辺に何があるか、どの店が近いか。

 土地柄とかもそうだけど、生活していく上で、場所は意外と大事だったりする。

 ホームを生活の拠点にしようと考えている俺たちにとっては、とても大切なことだ。


 そうしていると、一箇所目の候補に到着する。

 周りが民家に囲まれていて、人通りも多い場所だ。

 家と家の間にスペースがあって、アンディーが指をさす。


「ここだな。広さはあんまりだが、周りの環境的にはいい感じだぞ」


「う~ん、でもやっぱり狭くないかな?」


「そうだね。私たちの想像する家にはちょっと合わないかも」


 ミアとキリエが意見を口にする。

 色々と他にも意見が出たが、決めるには至らない。

 悪くはないが、他の候補も見てから決めることにした。


 続く二箇所目は、大通りから外れた場所にある。

 広さは候補の中で最大。

 その代わり、ちょっと治安が悪いと聞く。


「案内しといてなんだが、あまりおすすめはしない」


「なるほど、じゃあここはなしで」


 広さだけだったら最高なんだけど、全体的に雰囲気が暗いし、道行く人の数も少ない。

 治安の良さを優先しよう。

 そして最後の候補に向かう。

 場所は商店や民家からも離れていて、広さはそれなりの場所だった。

 普通の生活をするには、お店までの距離があって少し不便と言える。


「でも、ここってギルド会館に一番近いんじゃないの?」


「そう! おすすめポイントはそこだな」


「ねぇシンク、ここにしない? ギルド会館に近いほうが、私たちには便利だと思うし」


「さんせーい! あたしもここがいいな」


「皆がいいなら」


「わたしも同じ意見です」


 四人の意見が出揃う。

 アンディーが俺を見て、確かめるように聞く。


「決まりで良さそうか?」


「みたいですね」


 こうして、ホームを建てる場所が決まった。

 あとは建設を待つだけだ。

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