80.今後の方針

 土地が決まり、設計はアンディーに任せてある。

 大体の構想が決まったら連絡すると言われたので、その間は俺たちにやることはない。

 一日ずっと暇をしている……というわけにもいかない。

 俺たちはクエストを受けながら、ホーム完成を待つ。


「でもな~ 最近同じようなクエストばっかりなんだよな~」


 ギルド会館のクエストーボード前。

 人ごみを遠くから眺めて、キリエがそう呟いた。

 ミアが同調して続ける。


「確かに……ちょっと飽きてきたかも」


 俺は最近のことを振り返る。

 黒竜とかゴブリン軍団とか、そういう突発的なこと以外だ。

 クエストを受けて報酬を貰う。

 冒険者の一日は、大抵がそういう感じに終わる。

 クエストを受ける理由はバラバラで、お金がほしいからとか、強い敵と戦いたいからとか。

 皆いろんなことを動機にしていると思う。

 俺たちの場合はどうだろう?


「お金は結構貯まってるよね。家が造れちゃうくらいだし」


「だな~ 強いモンスターと戦ってみたいっていうのもあるけど、この辺りのモンスターは正直慣れてきたな。ユイは?」


「違う場所に行ってみたい」


「あっ、それ私も思ってた! 前の護衛みたいにさ。遠出のクエストとかも受けてみたいね」


「まだ行ってないエリアも見てみたいな。戦ったことないモンスターもいそうだし!」


 ワイワイと話が進んでいく。

 彼女たちの話しに耳を傾けながら、俺は頭の中で整理する。

 今のところ行っていないエリアは、街の周辺だと海岸エリアだけになる。

 少し離れていいのなら、砂漠エリア、雪山エリア、火山エリアがある。

 海岸エリアから海を渡ると、未開拓な孤島がいくつもあるって話も聞いたな。

 後は火山エリアを越えた先に、熱帯林エリアがあるとか。


 俺はぼそりと呟く。


「改めて考えると、行ってない場所って結構多いんだな」


「だよな! せっかくだしさ。順番に行ってみようよ」


「そうだな。クエストがあるなら、未経験の場所を優先しよう」


「ねぇねぇシンク、遠征はどうかな?」


 キリエと話していると、横からミアが尋ねてきた。

 俺は少し考えてから返答する。


「う~ん、ホームが完成するまでは止めておきたいな。何かあったときにすぐ戻れないと困るし」


「あぁ~ 確かにそうだね。じゃあホームが完成したら、遠出のクエストも受けよう!」


「ああ、そうしよう。ミレイナさんもいいですか?」


「わたしは皆さんにお任せしますよ」


 今後の方針について話し合い、決定した俺たちは、クエストボードへと向かった。

 話が長くなったこともあり、人ごみは多少減っている。

 その分、目ぼしいクエストはほとんどなくなっていたけど。


「良さそうなのあるかな~」


「えーっと……あんまりないね」


 ミアとキリエがざっと目を通して、話に出ていた場所のクエストは見つからなかったらしい。

 残念そうにボードを眺めている。

 ユイが小さな声で言う。


「明日からで良いと思う」


「そうですね。明日の朝になったら、クエストも補充されていると思いますし」


 ミレイナもつけたし、二人は肩をおとしつつ納得する。

 というわけで、今日は妥協してクエストを選ぶことになった。

 もう一度右から左へ眺めていくと、キリエが一枚に目をつける。


「あっ、これなんてどう? まだ戦ったことないと思うんだけど」


 そう言ってボードから手に取った依頼書には「ロックドレイクの牙を入手」と書かれていた。

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