78.どんなホームがいい?

「パーティーのホームを造りたいんです」


「ホーム? 家を買いたいってことか?」


「いえ、一から造りたいなと」


「へぇ~ そいつは思い切ったな。でも、だったら何で俺なんだ?」


「だって、アンディーさん言ってたじゃないですか。この店をデザインしたのは自分だって」


 今から一年半くらい前の話だ。

 アンディー道具屋は、こことは別の場所にあった。

 もっと小さなお店だったのを、移転して大きくしたのがこの建物だ。

 看板だけ古いのは、以前の建物からそのまま持ってきているから。

 

「そんな話よく覚えてたな」


「覚えてますよ。あの頃から毎日通っていたお店ですし」


「はははっ、そうだったな~ まぁ確かに、建築に関係した知識は持ってるぜ? ただ、やれるのは設計までだから、実際に造る業者は別に依頼することになるが?」


「それで構いません。初対面の人にお願いするより、信頼できる人に頼める方が、俺たちも安心なので」


 俺がそう話すと、四人も頷いていた。

 これを見たアンディーも納得して、腰に手を当てながら言う。


「よしわかった! 引き受けよう」


「ありがとうございます!」


 こうして、アンディーが家の設計を担当してくれることになった。

 深々とお辞儀をしながら感謝を伝えると、アンディーは照れくさそうに言う。


「いいってことよ。お前さんの頼み出しな。そんでどんな家にしたいか考えてあるのか?」


「あっ……それはまだです」


「何だよ。じゃあ要望を紙にでも書き出してくれ。それを元に考えるから」


「わかりました」


 そんな感じで話が終わり、俺たちは一旦道具屋を出ることに。

 アンディーに設計をしてもらうため、どんな家がいいのかを考える。


「ギルド会館に戻るか?」


「ん~ あそこって賑やかだから、気が散っちゃいそうだね」


 ミアがそう言うので、ギルド会館へ行くのをやめた。

 しっかり考えたいから落ち着いた場所が良いという。

 どこにしようかと考えていると、ミレイナが手を上げて言う。


「でしたら、わたしがよく行く喫茶店にしませんか? あそこなら静かですし、落ち着けると思います」


「喫茶店ですか、いいですね。皆もそれでいいか?」


「賛成!」


「いいんじゃないかな」


「うん」


「じゃあ決まりだ」


 ミレイナの案内で、彼女の行き着けの喫茶店に向かう。

 アンディー道具屋から歩いて二十分くらいのところで、おしゃれな看板がたっていた。

 看板には「喫茶エルザ」と書かれている。

 店内に入ると、木のぬくもりを感じられる内装になっていた。

 確かにここなら落ち着いて考え事が出来そうだと、全員が納得した。


「さて、どんな家が良いか」


 俺はテーブルに紙を置いて、出た意見を書いていくことにした。

 アンディーからは文字でなく、実際の間取りだったりを書いても良いと言われている。

 とにかく情報と言うか、要望がほしいとのことだった。


「先に大まかな所だけ決めようか」


 何階建てにするか。

 家の材質は何にするか。

 この二つを最初に決めておこう。


「三階建てがいい!」


 早くもキリエが手をピンと上げて意見した。

 俺が理由を尋ねると、彼女はウキウキしながら話す。


「だってこの街の家って、ほとんど二階建てばっかりじゃん? 三階建てって中々少ないから、目立って格好いいなーって」


 思ったよりも軽い理由だった。

 確かに、背の高い建物はグラニデの街には少ない。

 大きなお店とか、ギルド会館くらいだろう。


 キリエの意見に合わせて、ミアも付け足す。


「私もそれくらいが良いと思う。一階がロビーとかお仕事する場所で、二階が共用スペース、三階は個人の部屋とかでどうかな?」


「あぁ~ それはいいかもな」


 という感じで、高さは三階に決まった。

 続く材質は、満場一致で木材となる。

 この喫茶店の雰囲気が気に入ったこともあって、木のほうが良いという意見が多かった。

 その後は、どんな部屋がほしいかとか、個人的な意見を聞いていく。

 白熱して夕方くらいまでずっと話していたよ。

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