73.拾われる善

 リガールは続けて、ガランのパーティーメンバーへの処分を言い渡す。

 俺を刺したのはガランだが、ティアラたちも彼の行動は容認していた。

 犯罪を見て見ぬふりをしていたんだ。

 その罪は軽くない。


「他の者は冒険者の資格を剥奪。グラニデの街から永久追放とする。もしも立ち入れば、罪人として処理させてもらう」


 ティアラたちパーティーメンバーにも罰は与えられた。

 直接手を下したわけではないので、ガランのように罪人として処理されないのが幸いだろう。

 何度も騙されたし、酷い目にもあったからな。

 もう関わりたくないし、庇うこともない。

 ただ、一つだけ納得いかないことがあるけど。


 リガールが俺に尋ねてくる。


「私の決定は以上だが、君はこれでいいかな?」


「はい。あっ、でも一つだけお願いしてもいいですか?」


「何かな?」


「えっと、こんな場面で恐縮なのですが、勧誘をさせてほしいんです」


「勧誘?」


 リガールが察して小さく笑う。

 軽く頷いたのを確認して、俺は彼女に話しかける。


「ミレイナさん、よかったら俺たちのパーティーへ来ませんか?」


「えっ……」


 驚いたミレイナは言葉を失う。

 彼女もまた、ティアラたちと同じ罰を受けようとしていた。

 そこだけが納得できなくて、ミアたちにも相談していたんだ。

 そうしたら、三人とも満場一致で了承してくれたよ。


「ずっと回復担当がほしいって思っていたんです。ミレイナさんがよければですけど」


「で、でも私は……駄目ですよ。私は何もできなかった。全部知っていたのに……」


「かもしれませんね。でも、あなたがいたから、俺はこうして生きているんです。命の恩人だって言ったこと、あれは本心です」


 罪だと感じている心がある。

 そこが彼らとの明確な差だと思う。

 償いたいと思っているなら、尚更ここで終わりなんて良くない。


「私で……いいんですか?」


「貴女が良いんです。俺も、ここにいる彼女たちも」


「ミレイナさん! 一緒に冒険しましょう!」


「そうそう! あんだけすごい治療が出来るのに勿体ないぜ!」


「いてくれると頼もしい」


「皆さん……」


 ミレイナの瞳が涙で潤んでいく。

 俺は優しく微笑みながら、彼女にもう一度問いかける。


「俺たちのパーティーに入ってくれますか?」


「はい! それが償いになるのなら……私なんかでも役に立てるのなら」


「それは大丈夫です。命を救われた俺が全力で保障しますよ」


 豪快に流れていく涙。

 彼女の心は、ようやく解放されたのだろう。

 こうして一つの戦いが終わり、長く続いた因縁にも決着がつく。


 明日からの俺たちは、一体何をするのだろう。

 それはまた明日のお話だ。

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