62.遺恨を残しながら

 第二部隊に配属された俺たち。

 そこには見知ったパーティーの姿があって、互いに気付く。

 俺とガランは、しばらく黙ったまま顔を見合っていた。

 そして、痺れをきらしたように俺から話す。


「ガランたちも、ここに配属されていたんだな」


「……ああ、そっちもか」


「そうみたいだよ」


「……そうか」


 再び無言で見つめ合う。

 他の仲間たちも一緒だったが、一人も声を発しなかった。

 遠慮し合っているのか、何かを待っているようにも思える。

 とは言え、これ以上話すことも見当たらない。

 軽くあいさつにはなったし、そろそろ離れようとする。


「じゃあ――」


「すまなかった!」


 すると、ガランは勢いよく頭を下げて、謝罪の言葉を口にした。

 まさかという感じで、俺は驚いて一瞬だけ聞き間違えかと思った。

 それほど意外なセリフだったんだ。


 ガランは頭を下げたまま続ける。


「俺は……俺たちはお前に酷い仕打ちをした。この間のこともそうだが、これまでもだ。お前はパーティーのために頑張ってくれていたのに、それに気付けていなかった」


「なっ……急にどうしたんだよ」


「この間の一件で目が覚めたんだ。間違っていたのは俺たちで、お前は無能なんかじゃないって」


 ガランの口からは、次々と謝罪の言葉が出てくる。

 俺はどれも信じられなくて……いや、信じたくなくて疑っている。


「今さらそんなこと言われても……」


「わかってる。もう取り返せないことも、償えるなんて思っていない。だけど、せめて一緒に戦わせてほしいんだ」


 ガランは顔をあげる。

 俺によく見せていた酷い目つきじゃない。

 真剣に、誠実な眼差しで俺を見ている。

 しっかりと俺を見てくれている。

 そう感じてしまった。


「俺は……ガランたちを許せないよ」


「それもわかってる。許さなくて良い……ただ、俺たちを見ていてくれ」


「ガラン……」


「この作戦は必ず成功させる。今だけもで構わないから、一緒に戦ってくれないか?」


 ガランは優しい目をして尋ねてきた。

 そんな表情も出来たのだと、新しい発見をした気分になる。

 いや、そんなことよりも俺はどうする?

 ガランの言葉をどこまで真剣に受け止めていいのか。

 俺はしばらく考えて、自分がどうしたいのかを探り出す。

 戦うことは決まっているし、味方となってくれるなら頼もしいと思う。


 仕方がないか。

 俺はそう心の中で呟いた。


「……わかったよ」


 こうして、俺たちは折り合いをつけた。

 和解したわけではない。

 遺恨は残っているし、この先も消えはしないだろう。

 ただ、俺は彼らを許せないし、彼らもそれを理解している。

 それで良いのだと納得した。

 少しだけ……ほんのちょっとだけ心が軽くなったように感じる。

 

 だけど、この後俺は激しく後悔する。

 自分がとことん甘いということを、再認識させられることになる。

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