61.草原と丘陵の狭間
俺たちは急いで草原エリアに向かった。
西門を抜けてすぐ、大量の武器を運んでいるパーティーの一団を見つける。
俺たちは駆け寄り声をかける。
「すみません!」
「ん? おお! あんたらも来てくれたのか!」
パーティーの一人が俺たちに気付き、立ち止まってくれた。
俺たちは彼から状況を聞く。
ゴブリン部隊は現在、草原エリアを抜けた丘陵エリアを侵攻しているらしい。
軍団は道にそって真っ直ぐこちらへ向かっているようだ。
そこでリガールによって一つの作戦が立案された。
丘陵エリアと草原エリアの境には、いくつか渓谷がある。
大群が通れるほど広い道を進む場合、かならずこの渓谷を抜ける必要があるんだ。
そして、渓谷には二箇所ほど、一方的に攻撃できるポイントがある。
そのポイントに遠距離魔法が使える者を配置し、攻撃を続けることで、軍団が進むペースを出来るだけコントロールする。
一気に攻め込まれればいっかんの終わりだが、相手は所詮ゴブリン。
上手く流れをコントロールして、攻め込んでくる数を調整できれば、流れ作業のように倒すことも出来る。
「そんで三つの部隊に分かれてんだよ。渓谷の上から砲撃をする第一、第二部隊。渓谷を抜けた先で待ち構える第三部隊だ。俺たちは第三部隊に決まってる」
「なるほど。誰がどの部隊か最初から決まってるんですね」
「そうだぜ。支部長が割り振ってくれたんだ。確かあんたらは第二部隊だったな」
第二部隊。
渓谷で軍団に攻撃して、一気に攻め込まれるのを防ぐ役目か。
俺とユイが遠距離で戦えるし、そこを考慮されたんだろう。
「だったら俺たちは渓谷に向かえばいいんですね」
「ああ、もう先頭は準備が進んでるはずだぜ」
「わかりました。お互い頑張りましょう」
「おう。こっちとしちゃ、黒竜を撃退したパーティーが参戦してくれるなら心強いぜ」
話を終え、情報を入手した俺たちは渓谷へ向けて移動を開始する。
徒歩だと時間がかかってしまうので、説明をしてくれた冒険者が使っていた馬車を一台借りることにした。
馬車を走らせ一時間。
問題の渓谷へ差し掛かる。
途中で整備されたルートをはずれ、渓谷の上へと登っていく。
しばらく進むと、指定されたポイントが見えてきた。
すでに複数のパーティーが駐屯し、戦闘に向けて準備をしているようだ。
キリエが集まったパーティーを見て言う。
「すごい人数だな」
「ああ。だけど……」
十万と言う数字を前にすると、この程度の人数では足りないとわかる。
集まっているパーティーは三十弱。
人数だけなら百人を超えているし、ワイバーン戦以上の戦力が集まっているそうだ。
それでも足りないと感じる。
今からこんな感じだと、軍団をじかに見てしまえば、戦意を喪失してしまうかもしれない。
「気を引き締めないとな」
俺はそう自分に言い聞かせる。
そのまま馬車を止め、駐屯しているパーティーに合流した。
あいさつをしようと一団に近づくと――
「――! ガラン」
「シンク」
思わぬ場所で、彼らと再会してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます