10.ダンジョン探索(追放側視点)
シンクをパーティーから追い出したガランたちは、新たな仲間を迎え入れていた。
「ミレイナです。職業は僧侶です。これからよろしくお願いします」
修道女のような白い服を着た女性が、ガランたちに向かって丁寧に自己紹介をしていた。
一つのテーブルを囲って座り、パチパチと拍手を送る。
四人を代表して、リーダーのガランから一言。
「ようこそ俺たちのパーティーへ! 期待しているよ」
「はい! 前任者に負けないくらい、皆さんのお役に立ってみせます!」
「前任者? あぁ~」
ガランはニヤニヤしながら、他の三人と目を合わせる。
考えていることは一緒のようだ。
一人だけ事情を知らないミレイナが、ガランたちに尋ねる。
「どうかされましたか?」
「あーいや? 何でもないよ。まぁ前任者に劣ることはないだろうから、そこは安心して良いと思うよ」
「そうそう! あんな奴より下なんていないしね」
「同感だな」
頷いてるドーロ。
そのまま四人は、ゲラゲラ笑いながら談笑を始める。
ミレイナは話についていくのに必死な様子だった。
しばらく談笑を続け、ようやく本題に入る。
ガランはニヤリと笑いながら、一枚の紙をテーブルに置く。
「今日のクエストは、新しく発見されたダンジョン探索だ!」
用紙にはこう書かれている。
新規のダンジョン探索。
山岳エリアの一部で、登山を趣味とするベテラン冒険者が新しいダンジョンの入り口を発見したらしい。
これは正式にはクエストではない。
制限はなく、報酬はダンジョン内に隠されているであろう宝だ。
「お宝は早い者勝ちだ! 俺たちが一番にこのダンジョンを攻略して、上級パーティーとして名を残そうぜ!」
「いいね! あたしらが最初って旗も立てようよ!」
「ナイスな提案だな、ティアラ。それじゃさっそく出発しよう」
ゾロゾロと席を立ち、ギルド会館を出て行く。
目的の場所までは、徒歩だと三時間ほどかかるらしい。
ガランたちは途中まで馬車を借り、適当な地点まで近づいた。
途中からは山を登る必要があったから、馬車を降りて徒歩に切り替える。
四十分くらいかけて登ると、大きく開いた穴がある。
「この先か」
「みたいだね」
辺りにはいくつか足跡が見つけられる。
どうやら彼ら以外にも、ダンジョン攻略へ向かったパーティーがあるらしい。
「俺たちも行こう」
ガランの早足に置いていかれない様に、四人はせっせと後を追う。
洞窟は当然ながら整備されておらず、足場も不安定で歩き難い。
躓かないように注意しながら進んでいくと、比較的広い空間に出る。
そして――
「門があるよ」
ティアラが指差した先には、金色の枠で覆われた門があった。
周囲の風景とあきらかに合っていないそれは、見るだけで重厚感が伝わる。
ミレイナはごくりと息を飲む。
「さっそく中へ入るぞ」
ガランが言うと、全員がこくりと頷く。
彼が門に手をかけ、ゆっくりと開けていく。
中は青く光った石で造られていて、天井、壁、床全てが光っている。
お陰でとても明るい。
「これがダンジョン……」
「何だ? あんたも初めてなのか?」
「はい。ティアラさんたちもですか?」
「未探索のダンジョンはね。探索済みなら何回か潜ったことはあるよ」
パーティーの全員が未開拓ダンジョン初体験。
そうだとわかった途端、ミレイナは不安になっていた。
不安が表情に出ていたらしく、気付いたティアラが背中を叩きながら言う。
「大丈夫だよ! あたしたちは上級パーティーなんだから! こんなダンジョンちょちょいっと攻略できるって!」
まさに根拠のない自信。
ミレイナを除く四人が、同じような思考回路で前に進む。
一人だけ冷静なミレイナは、気を引き締めながら後を追っていく。
そうして彼らは知ることになる。
これまでいかに、シンクがパーティーに貢献していたのか。
彼を失ったことで、パーティーには大きな穴が開いてしまっているということを。
このダンジョンで痛い目を見るなんて予想もしていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます