5.パーティーを探します

 太陽の日差しが眩しいくらいに差し込む。

 身体のダルさを感じながら、ゆっくりと身体を起こして時間を見る。

 時計の針は正午を回っていた。

 ベッドの周りには、昨晩作った魔道具が散乱している。

 作るのが楽しすぎて寝落ちするなんて初めての経験だ。

 だらしないとは思うけど、そのお陰でわかったことも多い。


 魔道具作成スキルについてだ。

 元々ある道具に能力を付与する場合、一つくらいなら素材なしでも大丈夫らしい。

 魔力は大量に消費するけど、素材を消費しないのはありがたい。

 二つ以上だったり、効果が異常に高かったり、ゼロから作る場合は別だ。

 ちゃんと必要な素材を揃えなくてはならない。


「まっ、一つでも十分役立つし問題ないけど」


 そんな独り言を口にしながら、服を着替えて宿屋を出る。

 向かっているのはもちろんギルド会館だ。

 昨日の今日で気は進まないし、足取りも遅くなる。

 だけど、早く新しいパーティーを見つけないと、今後の生活にも関わるからね。


 冒険者を辞めるという選択肢もあった。

 あったけど、やっぱり夢は捨てられなかったよ。

 新しいスキルも手に入れたし、やっていけないわけじゃない。


「ん? というか、今だったらみんなも――」


 またパーティーに入れてくれるんじゃないだろうか?

 そんな予感が、ギルド会館の前に到着して過ぎった。

 しかし、すぐに駄目だと悟る。

 

 戻してくれる可能性はある。

 むしろ高いかもしれない。

 だけど、一度追放されたパーティーに戻っても、俺は快く戦えないと思う。

 またいつ追い出されるかわからない。

 そんな恐怖を感じながらなんて、きっと長くは耐えられないだろう。


 結論が固まり、自分の頬をパチンと叩く。

 気合を入れなおし、気を取り直してギルド会館へと踏み込む。

 

 幸いなことに、ガランたちの姿は見当たらなかった。

 こんな時間だし、きっとクエストに出ているのだろう。

 ちょっぴり安心しながら、クエストボードへと近寄っていく。

 ボードにはクエスト以外にも、パーティーメンバー募集の張り紙が張られていることがある。

 それ目当てに来たんだけど……


「上級魔法が扱える魔法使い募集……ドラゴンと戦える戦士募集。こっちは~ 回復魔法が――もういいや」


 どれこもれもハードルが高い。

 ここは駆け出しが集まる街でもないし、皆もそれなりの実力者を求めている。

 俺みたいなのは、行ったところで門前払いだろう。


「やれやれ。どうし……ん?」


 その中で一枚。

 目に留まった募集要項を見つける。


 パーティーメンバー募集!

 誰でも歓迎!


 おぉ~

 これなんて良いんじゃないだろうか?

 誰でも歓迎なら、俺でも大丈夫ってことだよな。

 まぁ詳しい内容は全然書いてないし、手書きなのも気になるけど……


 ちょっぴり不安を感じつつ、えり好みしている場合じゃないと思った。

 張り紙を外し、さっそく受け付けに持っていく。

 カウンターで紙を提出すると、掲載したパーティーへ連絡を入れてくれる。


 少々お待ちくださいと言われ、待つこと三十分。

 受付横の椅子の一席に座っていると、明らかにコチラへ近づいてくる足音に気付く。

 あえて気付かないフリをしながら、声をかけられるのを待つ。

 そして――


「あの~ 加入希望の方って貴方ですか?」


 聞こえてきた可愛らしい女の子の声に、俺は素早く反応する。


「はい。そうです――」


 振り返ると、そこには三人の美少女が立っていた。

 女の子だけのパーティーなんて予想外すぎて、一瞬だけ固まってしまう。

 そんな俺を見て、最初に声をかけてくれた子が首をかしげる。


「えーっと、シンクさんで良かったですよね?」


「あ、はい! シンクです。よろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします! 私はリーダーのミアです! 見ての通り剣士です!」


 元気一杯にあいさつをするミア。

 明るい赤髪に、黄色いカチューシャがよく似合っている。

 口で言った通り、軽装の鎧と腰には剣を装備していて剣士っぽい。


「あたしはキリエ! 職業はこの槍を見ればわかるよね?」


 続く彼女も元気よく話してくれた。

 灰色の髪を後ろで結んだポニーテールに、バイザーのような変わった帽子を被っている。

 背中には身長の倍はある長槍を装備している。


「ユイ……魔法使い……です」


 そして最後の一人。

 彼女は二人とは違って、ちょっぴり小さな声。

 だけど、声は一番可愛らしい。

 フードつきのローブから見える藍色の髪と、サファイアのように美しい瞳が特徴的。

 体格は一番小柄で、大きな杖を大事そうに両手で握っている。


 個性豊かな三人にあいさつされ、俺は密かにテンションが上がっていた。

 これは思わぬ当たりを引き当てたかもしれない。

 後は……ちゃんと俺を採用してくれるかどうかだな。 

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