4.魔道具作成スキル

 魔道書は選ばれた者が持つことで、そこに記された魔法を扱うことが出来る。

 もしやと思って確認してみたら、見事に一つ増えていた。

 驚きのあまりベッドから落ちたけど、気を取り直して確認する。


「魔道具作成……しかも限界レベルだ」


 手に持っている魔道書は、魔道具の作り方について記されたものだった。

 それを鑑定眼スキルで隈なくチェックしたことで、魔道書の持ち主として条件を果たしたらしい。

 しかし魔法じゃなくてスキルなのはどういうことだろう。

 俺の魔法適正が低すぎて、スキルに変わっちゃったとか?


「いやいやいや。さすがにそれはないか」


 とにかく、偶然にも新しいスキルを習得できた。

 しかも幻の魔道具作成だぞ。

 こんなスキルは俺以外に持っていないんじゃないか?

 もはやユニークスキルと一緒だろう。


 テンションが上がっていく。

 スキルの使い方は、獲得と同時に脳内へ流れ込んでくる。

 それを思い出すように目を瞑り、スキルの使い方を確認する。


 魔道具作成。

 専用の魔法陣を展開することで、任意の能力を付与した魔道具を作成できる。

 作成方法は大きく二パターン。

 ゼロから魔道具を作り出す方法と、元々あるアイテムに能力を付与する方法。

 付与する能力や、作り出す魔道具によって、必要な素材や魔力は異なるようだ。


「試しに何か作ってみるかな」


 そう思って、手持ちの道具やアイテムを取り出し、ベッドに並べてみる。

 冒険で使える物ならと、いろんなアイテムを用意してあった。


「さて、どれにするか」


 ずらっと並べた物の中で、最初に目に留まったのは小さなポーチだった。

 小物を入れるように購入した物で、普段は腰に巻いている。


「これの容量を拡大できないかな」


 噂で聞いたことがある。

 上位の冒険者や国の偉い騎士たちは、マジックバッグという容量が無限に近いバッグを持っているらしい。

 割と有名な魔道具らしいけど、これまで一度もお目にかかったことがない。

 もしも作れるなら、これからの冒険に役立つだろう。


「よし!」


 作る魔道具は決まった。

 俺はポーチを机に移動させ、椅子に座って両手をかざす。

 

 魔道具作成――発動!


 心の中で唱えると、机に虹色の魔法陣が展開される。

 あとは作りたい魔道具をイメージして魔力を注げば良いらしい。

 必要な量の魔力が溜まるまで、とりあえず注いでみることに。


「っ……結構もってかれるな」


 だけど大丈夫。

 これでも魔力量には自信があるんだ。

 魔法適性なしだから、宝の持ち腐れだったけど、こんなことで役立つなんて思わなかった。

 そうして魔力を注ぎ終わると、魔法陣が強く光り、ポーチを包んで変化させる。


「これで終わった……のか?」

 

 魔法陣が消え、ポーチが机に残っている。

 見た目は以前のままだし、パッと見は変化していないように見える。

 試しに中を開け、手を突っ込んでみる。

 すると――


「うおっ! めちゃくちゃ入るぞ!」


 手はどんどん中へと入っていく。

 最終的には肩まですっぽりと入ってしまった。

 感覚的にはまだいけそうだ。


「すごいな。本当に出来ちゃったよ」


 自分の力に興奮する。

 そんな体験が出来るなんて、夢にも思わなかった。

 興奮収まらないまま、次々に他の魔道具を試していく。

 それこそ夜が更けるまで、魔力が尽きるまで夢中になって作り続けていた。

 気が付けば魔力切れでダウンし、次に目覚めたのは翌日の昼だった。

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