第6話 結婚式

無事に安定期に入っての本日は結婚式。


実は指輪は結局買った。


というか、式場に自前でお願いしますと言われ、買わざるおえなくなった。


あまり関心の無かった私達は、一番シンプルな指輪を購入した。


お店の人に言われ、取りあえず指輪にお互いのイニシャルも彫ってもらった。



私達の左手薬指には、ピカピカの結婚指輪・・・


別にいらないって思っていたけど、こうやって着けてみると結婚したんだなって、

実感する。


何か気恥ずかしい気持ちになったのは、お互い様のようだ。


だって、課長の顔も少し赤い。



身支度を整え、向かった会場のホテル。


フロントに声をかけると、別々に移動。


私は、白粉パタパタ、真っ赤な紅をひき、白無垢姿。


頭が重いし、身体もぎゅうぎゅう、頑張れ私。


「お~。綺麗になるもんだね~。」


妹の声と共に家族が現れる。


確かに、真っ白に化粧をして白無垢を着た姿は、私でも見違えた。



ホテルの中にある館内神殿に移動すると、羽織袴をバリっと着こなすイケメン

旦那様。


「お、花嫁って感じだな。」


落とされる低音セクシーボイスに私の頬も赤く染まる。



厳かな雰囲気の中、式は進んでいく。


祝詞に三々九度、指輪の交換。



無事に式が終わると、皆で写真撮影。


そして、今度は披露宴会場で金屏風の中、招待客のお出迎え。


金屏風の前、次々に現れる招待客。


会社の元同僚たちにお互いの友人、名前も知らない親戚や両家の関係の人達。


思ってたより多いな~。


全てを親たちが仕切っていたため、招待した人数も分かっていない。



そして、色打掛にお色直し。


頭には、金色や鼈甲の簪がシャラシャラいっている。


真っ赤に金の刺繍に豪華な柄の色打掛・・・お、重い。



会場の扉の前で、課長と並ぶ。


扉が開き、ライトに照らされ入場するが・・・。


高砂の席、遠くないか!


それよりも、この人、人、人・・・多くない!


びっくりする人の多さに、呆気にとられる。



しゃなりしゃなりとお淑やかに歩みを進め、高砂の席につく。


来賓の挨拶が続く中、その中に西園寺グループ会長が・・・。


“エッ!会長まで、社員の結婚式に出てくれるの!?”


「えー、久宝課長は我が社をしょって立ち・・・・我が西園寺グループの未来は

 久宝君に掛かっていると言っても過言ではないでしょう。

 今日は、ご結婚おめでとうございます。」


“課長って、凄い人だったんだ。

 会長にまでこんな言葉をかけてもらえるなんて”


私は、素直に会長の言葉に感動していた。


まさか、結婚式の後になり衝撃の事実を知る事になるとは・・・。


そして、家族の中で知らなかったのも私だけだったとは、この時の私は知る

由もない。


乾杯の挨拶も終わり、お色直しになった。


次は、ウェディングドレスだ。


首元から袖までレースが施され、ビーズとスパンコールで隙間なく刺繍され

シフォンが幾重にも折り重なっていて、とっても豪華。


扉の前で父親の腕に手を絡ませ、何か言わないとと思っているのに言葉が

出てこない。


そのまま、扉が開き中に入ってしまった。


中に入ると、先にグレーのタキシード姿の課長。


父は、課長にガシッと抱き着き、固く握手をすると私を手渡す。


課長の腕に自分の手を絡めながら、父の姿に涙ぐんでしまったのはしょうがない

だろう。



余興が続く中、また、お色直しに向かう。


今度はカラードレス。


ビスチェタイプの水色のドレスにも、ビジューや刺繍が散りばめられていて、

ウェディングドレスに負けず劣らず豪華。


今度は、扉の前で課長と腕を絡める。


こうして、改めてみると165㎝の私と並んでも全く違和感ない程高身長の課長。


確か185㎝っていってたな・・・ヒールを履いて丁度いい感じ。



扉が開き、二人で歩みを進める。



何だかんだ、どうにか終わった披露宴。


そのまま二次会に行き、マンションに戻ったのは夜中の一時。


ベロンベロンに酔っぱらった課長をどうにかベットに運び、私もあっという間に

夢の中。




結婚式は土曜日だったので、今日はゆっくり休める。


新婚旅行は、妊娠もあって出産してから、のんびり行くこととなった。


リビングで二人寛いでいる中、私は気になっていたことを聞いた。


「さっき、招待客の席次表を見てきずいたんだけど、西園寺グループの人が

 沢山きてたんだね。」


「あれ、言ってなかったか?

 俺のお袋、西園寺グループ会長の娘だけど、ついでに言うと社長が親父な。」


「ハ?」


「だから、俺、西園寺グループの直系の孫なんだけど」


「嘘!知らないんですけど!?」


「あ!?会長も挨拶で西園寺グループの将来がって言ってただろ?」


「そ、そうだったけど・・・」


ここにきて、まさかの爆弾発言!?


知らないから!?


「心の家族は知ってるはずだけど・・・?」


「そ、そうなの?」



まさか、肝心の本人が知らなかったとは・・・。


「多分、将来的には俺、会長の養子になると思う。」


「エッ、なんで!?」


「西園寺家は、男がなかなか生まれないんだ。

 お袋も女三姉妹の長女だし、その子供たちも男は俺だけ。

 このままだと、西園寺の名前がなくなるだろ。

 近いうちに、心も西園寺になるから。

 で、そうなったら俺は本社に移動になる。」


「そ、そうなんだ・・・。」


自分のキャパを超えた現実に、脳が考えるのを辞めたのが分かった。



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