第3話 カレカノ!?

たっぷり愛し合った私達は、お互いシャワーを浴び、ソファーで寛いでいた。


スッピンなのに、気兼ねなくいれるのはどうしてなのか・・・。


不思議なものだ。



「課長、私たち付き合うでいいんですよね。」


「そうだな。」


「私達って、社内恋愛になるんですよね。」


「ああ」


「それって、もし別れたら気まずくないですか?」


「そうかもな」


その返事を聞いて、今までの過去が走馬灯のように私の頭の中を駆け巡った。


そして、気がつくととんでもない事を口走っていた。


「じゃあ、気まずくならないように結婚してから付き合いませんか?」


私の言葉に「・・・・・?」とよく分からないという顔をした後、課長の返事は

こうだった。


「まあ、他に付き合ってる人がいるわけじゃないから、いいけどな」


「じゃあ、今直ぐ、課長の親に結婚するって連絡してくださいよ」


「あ~、まあ、いいけど・・」


そう言ってスマホで電話をかける。



「あ、俺、穂高。あのさ~、結婚しようかと思って・・・」


そう言うと電話の向こうで、慌てたような声が聞こえる。


「あー、うん、・・・分かった。」


そう言って通話を切った課長は私にこう告げた。


「明日、家の家族と会う事になった。」


「本気ですか?」


「ああ、お前が言ったんだろ。」


「そうですけど・・・。」


「まあ、これも何かの縁だ。お前も親に連絡しろ」


恐ろしい事を言う課長。


私の最も恐れていることを、サラッと言う。


大体、こう言ってしまったのは親の所為でもある。


付き合って反対されて別れるくらいなら、親が結婚をOKした後なら文句はない

だろうと考えた自分。


極端すぎるだろうか・・・?


“俺はしたのに、お前はしないのか”という無言の課長にジトっとした目に耐え

切れず、渋々電話する。



「お母さん、お父さんいる?変わって。

 あ、お父さん、私、家の会社の課長と結婚しようと思うんだけど

 今度挨拶に行っていいかな?」


どうせいつものように、「会わん!」と言われて切られるだろうと思っていた

のに、予想外の言葉が返ってきた。


「来週の土曜日に泊りできなさい。

 泊まれる用意はしておく。」


そう言って電話は切れた。


思わず切れたスマホを眺めてしまう。



私の様子に課長が「どうだった?」と聞いてくる。


「あ、えっと、来週の土曜に泊りで来いとのことです。」


「そうか、綾瀬の実家は遠いのか?」


「はい、ここから車で7時間、新幹線で3時間くらいです。」


「・・・遠いな。

 分かった、新幹線で向かおう。」


「いいんですか?」


「まあ、いいんじゃないか」




結婚ってこんな感じだっけ?


結局、その日は翌週の挨拶もあるからと、一週間の同居が決定し、一週間分の

荷物とお泊りセットを課長の車に乗って取りに行くことになった。


帰り道は、夕飯は私が作ると提案しスーパーに寄ってもらった。


課長の希望はハンバーグ。


材料を買ってマンションに帰る。



私はひき肉を捏ねていると、珍しい物をみるように課長が私を見る。


「そんなに見てどうしたんですか?」


「イヤ、綾瀬に料理を作るイメージが無かったから、不思議で」


「失礼な!私だって料理くらいできます。」


「そ、そうか・・・。良い嫁さんになるな。」


「一応、課長の嫁になる予定ですけど・・・。」


「・・・そうだった。

 ところで、呼び方と敬語なんとかしないか?

 結婚するのに課長はないだろう。」


「そうだね、じゃあ、タカちゃんで。」


「なんだそれ!この歳でタカちゃんかよ。」


「良いじゃないですか!

 タカちゃんは、私をなんて呼ぶの?」


「じゃあ、ココロでいいか?」


「いいよ。これでいい?」


「ああ」



丁度話がまとまったところで、準備OK。後は焼くだけだ。



出来上がった料理をダイニングテーブルまで運ぶと、並べられた料理を見て

課長は「凄いな」と呟いた。


手を合わせ食べ始める。


「お!美味い!心、お前料理上手だな。」


「良かった、そう言ってもらうと一安心だわ。」


私も安心して箸を進めた。


食べ終わって、お互いお風呂に交代で入りながら晩酌をする。


今日から付き合い始めた割には、普通にこの状況に溶け込めている自分に

不思議でしょうがない。


寝るかと・・ベットに横になれば、当たり前のように愛し合う。


何気に身体の相性もいいみたいで、私は初めてイキすぎて気を失うという

経験をした。


そんな私に課長もかなり満足そうだった。



翌日、課長の両親に会いに実家に向かった。


実家はマンションから30分程の高級住宅地だった。


「凄い所に住んでるんだね。」


「ま~な。はい、到着。」


「ここ!?」


「そうだ。」


「豪邸だね。」


「そうか?」


自動の門をくぐり、スロープを進んだ先にはもの凄い豪邸が広がっていた。


“課長って、お坊ちゃまだったの!?”



私の不安をよそに、課長は車を降り、スタスタ玄関に向かう。


インターホンを鳴らすと玄関が開き、50代位のエプロン姿のふくよかな女の人

が現れた。


「坊ちゃん、お帰りなさいませ。

 そちらが例のお話の方ですか?」


「ああ、そう、綾瀬心さんだよ。

 心、昔から家の事をしてくれている野口 愛子ノグチ アイコさん。」


「初めまして、綾瀬 心アヤセ ココロです。

 よろしくお願いいたします。」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします。

 中にどうぞ。」


野口さんは感じの良い笑顔を向けて、中に招き入れてくれた。


玄関を入ると、更に豪華さに目を見張る。


課長について歩みを進め、広いリビングに入る。


ソファーで寛ぐ二人の男女。


“この人達が、課長の両親かな”


一気に緊張が増してきて、心臓がバクバクする。


向かいのソファーに座ると、課長が口を開いた。


「俺、結婚するから、結婚相手の綾瀬心。

 同じ営業部で働いている。」


「そうか、初めまして心さん。

 穂高の父の久宝 幸一クボウ コウイチです。」


「心さん、初めまして。母の里美サトミです。」


「は、初めまして、綾瀬 心アヤセ ココロです。」


ご両親とも、課長の両親と言われ、納得の美男美女だ。


遺伝って凄い。


「心さんは、家の穂高の嫁になるのでいいのかな?」


「あ、はい、そのつもりです。」


「私達は、穂高が選んだ人なら反対するつもりはないから。

 穂高は、心さんの家に挨拶したのか?」


「来週、泊まりで言って来る。」


それからは、私の実家のことや仕事のことを話し、夕飯に出前のお寿司を

食べてお開きとなった。


帰りの車の中、私は疑問に思った事を聞くことにした。


「タカちゃんの家って、お金持ちなの?」


「まあ、そこそこじゃないか。」


「そうなんだ、あんな豪邸でお手伝いさんもいたから、ビックリしちゃった。」


「そうかぁ~、まあ、俺達は俺達、親は親だから別に大丈夫だろ」


「まあ、そうだけどね。」


まあ、なるようになるか・・・。



部屋に戻り、ソファーでまったり晩酌してると


「なあ、明日からだけど、取りあえず会社では今まで道理でいこうと思うけど、

 どうだ?」


「うん、結婚するまでは黙っててもいいんじゃない。」


「そうだな、そうするか。

 明日から会社だから寝るか。」


「うん。」



ベットに入ると、課長の手が胸を触り出す。


「タカちゃんって、結構性欲強いの?」


「イヤ、俺もこんなだって初めて知った。

 なんか、心が隣にいるとしたくなる。嫌か?」


「ううん。嫌じゃないよ。」




そして、今日もたっぷり愛され眠りについた。



月曜の朝、隣で眠る課長を残し、少し気怠さを感じる身体を起こしシャワー

を浴びる。


簡単に身支度を整えて、朝食をつくり始めた。


7時になり寝室の課長を起こすために寝室に向かった。


「タカちゃん、起きて!朝だよ。」


「う~ん。」


薄っすらと目を開け、私を引き寄せキスをする課長。


「朝から何してるの!?

 もう直ぐ、ご飯ができるからシャワー浴びてきて。」


「あ~、うん。」


のろのろと起き上がり浴室に向かう課長を見ながら、ちょっと火照る頬を冷ます。


“課長って、結構甘々なの?”


何気に、新婚さんぽい状況に自分でもビックリだ。



朝食は簡単な和食。

焼き魚に納豆、のり、味噌汁、ごはん、ザ!日本の朝食!


シャワーを浴びて、戻った課長と「「頂きます。」」


課長は今日も残さず食べてくれた。


マンションを出るのは、8時10分。


課長と車で出社。


それまでに、食器を食洗器にかけ、自分の支度に取り掛かった。


5分前には準備ができ、リビングに向かうと、いつものようにスーツをビシッ

と着た課長がソファーでコーヒーを飲んでいた。


「行くか?」


「うん。」


二人で部屋を出る。



車に乗って、会社近くの月極駐車場に着くと、先に私が車を降りる。


「じゃあ、また会社でね。」


課長と相談して、私が先に会社に向かい、時間をおいて課長が会社に向かう

ことに決めた。


結婚までは、一応秘密だし・・・。



会社での課長は、付き合っているなんて微塵も感じさせないほど普通だった。


「綾瀬、このデータを打ち込んでおいてくれ。」


「はい、分かりました。久宝課長。」


いつも通りの会話に仕事。


私達、俳優になれるかも?



退社時間になり、鞄を持って席を立つ。


「お疲れ様でした。」


会社を出て、駅に向かう。


課長のマンションは会社の最寄駅から二駅先、駅からも徒歩3分の好立地。

マンションから50メートルほどでスーパーもある。


駅から出るとスーパーで食材を買い、マンションに入った。


夕食も出来上がり、テレビを見ていると課長が帰ってきた。


「おかえりなさい!」


「ただいま。」


「夕飯準備するから、着替えてきて。」


「ああ。」



クローゼットに向かいながら、ネクタイを緩める姿はセクシーな大人の色気が

漂っていて、何とも言えない気持ちになる。


二人でダイニングテーブルを挟んで、「「いただきます」」



始まりは、いきなりだったけど、こういうのもいいかもしれない。



夕飯を食べ、いつものように代わる代わるお風呂に入っての晩酌の時間、

テレビでは芸人のお笑い番組・・・課長ってこんな番組も見るのか・・・。


意外と笑うし、笑いのツボが私と一緒だ。


少しずつ、課長の素を知って行く。


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