第17話

 再びやってきた土曜日。

 今日は萌恵奈も授業はお休み。

 なので、ここぞとばかりに朝から萌恵奈はギュゥゥっとベッドの中で俺を抱き枕代わりのようにして抱きつき、幸せそうな寝顔を晒してスヤスヤと二度寝を堪能していた。


 一方の俺は、完全に目が覚めてしまい、二度寝できそうになかったので、萌恵奈の頭をポンポンと優しく撫でながら、ふとこれまでのことを振り返っていた。


 萌恵奈が突如家に押しかけてきて、『私、自粛期間の間、柊太と同棲するから!』と言い出した時は、目が点になったのを覚えている。

 そして、この三年間キスを一度しかしたことのなかった俺達が、ここまで付き合いたてのカップル並みにイチャイチャするような関係性に様変わりするとも予想だにしていなかった。


 萌恵奈の中で溜まりに溜まっていたイチャつきたい欲がすべて放出されている結果なのかもしれない。

 そして、恐らく俺の胸の中にも萌恵奈と似たような蟠った欲があったのだろう。

 二人の心に抱えていた鬱憤やら不満やらを爆発させた結果。こうしてイチャイチャ生活が続いているのだと思う。


 だからそこ、考えてしまうのだ。

 自粛期間が終わったら、俺達の関係性はどうなってしまうのだろうかと。


 世間では都内のPCR検査の感染者数が二桁代をキープするなど、徐々に感染抑制の兆候が見られ始めている。

 自粛期間が終わり、両親が家に帰ってきて、萌恵奈も家に帰ったとしたら、俺達の生活リズムはどう変化していくのか不安だった。


 今まで通り外でデートして帰るだけの淡泊な関係に戻るのかもしれないし、もしかしたら、デートした後にホテルに行くような流れに変化するのかもしれない。

 近い将来のことなんてわからない。


 俺が通う大学も5月13日からオンライン授業で講義が開始されることが先日公表され、お互い多少なりとも家の中での同棲生活にも変化は生じる。


 俺と萌恵奈は、状況の変化に応じては、家の中での過ごし方に変化を持たせて、萌恵奈とのスキンシップの取り方も変えてきた。


 ウイルスとの戦いにある程度の終止符が打たれて、普通に外に出れるようになった暁にも、状況の変化に応じて、俺と萌恵奈の恋人関係も変化していくのだろう。

 それがいい方向へと進むのか、悪い方向へ進んでしまうのかは、少なくとも俺と萌恵奈の今後の対応にかかっている。


 だからそこ、この自粛期間、萌恵奈との同棲生活を少しでもより良いものにしようと、これから付き合っていく上で大きな進展のきっかけになった幸せな出来事だったと思えるようにしようと、俺は心の中で誓った。


 少しでも萌恵奈との同棲生活をして良かったと心の底から思えるためにも、彼女と今できることを遂行して、彼女をより本気で向き合いながら、より一層大切に想って愛することを決めた。

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