第10話
前日に投稿しました。9話の萌恵奈が風呂場に入ってきて抱きつくシーンで、心理描写を一言だけ書き加えました。
物語の進行に特に問題はないので、少しでも興味が湧いた方だけお確かめください。(特に面白い表現でもなんでもないです)
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ジャァっとシャワー音が聞こえてきて、微かな熱気が皮膚に伝わってくる。
「はぁー。あったかい……癒し」
幸せそうな吐息を吐きながら、冷えた身体を温める萌恵奈。
くそっ、そんな蕩けそうな甘い声で呟かないでくれ!
加えて、萌恵奈の女の子特有の香りもほのかに漂ってきて、俺の鼻腔をくすぐる。
ここは我慢だ……。振り向いちゃダメだ……! 耐えろ俺!
自分に言い聞かせるように頭の中で唱えながら、浴槽の掃除を行っていると――
「柊太。背中洗ってくれない?」
無残にも俺の願望は、幼馴染彼女の一言によって打ち砕かれる。
無駄だと分かっていても、抵抗はしておこう。
「待って、今風呂掃除中」
「じゃあ、先髪洗ってるー」
いやっ、どんだけ背中俺に洗わせたいの!?
思わず突っ込みかけたが、なんとか踏みとどまる。
その間にも萌恵奈はシャンプーで自分の髪を洗い始め、シャンプーの心地よい甘い香りが再び俺の鼻腔をくすぐる。
ひとまず、スポンジで浴槽内を一通り洗い終えたので、浴槽内をシャワーで洗い流すことにする。
ちらっと萌恵奈の方を見ると、肩甲骨あたりまで伸びた真っ直ぐの髪をくしゅくしゅと泡立てて洗っているところだった。
「悪い、一瞬シャワー借りるぞ」
萌恵奈に一言詫びを入れて、俺はシャワーノズルを手に持ち、カランをくるりとひねりお湯を出す。
浴槽についた洗剤をシャワーの水圧で洗い流していき、ピカピカにしていく。
一通り浴槽内を洗い流したところで、俺はシャワーを出したままの状態で萌恵奈に返す。
「悪い、ありがと」
「はーい」
萌恵奈は手にシャワーノズルを受け取ると、そのまま頭の上に持っていき、髪の毛を洗い流す。
俺は浴槽の栓を閉めて、湯沸かし器の『ふろ自動』ボタンをぽちりと押す。
電子音がピっとなり、『お湯貼りをします』と音声が流れる。
「あれ、湯船も浸かるの?」
「まあ、待ってる間寒いだろうから……」
お湯釜の吹き出し口から勢いよく流れ出るお湯を俺はじっと眺めていた。
後ろを向けば、無防備な状態で素肌をさらけ出している萌恵奈の肢体が丸見えで、正直まじまじと見るのも気が引けるから。というのは嘘で、本当は興奮してしまいそうで、現実から目を背けているヘタレです。
「ねぇ、シャワーの出が悪くなったんだけど」
「大丈夫、いずれ復活するから」
しばらくして、浴槽の湯を張る勢いが緩み、シャワーの水圧が一気に増した。
萌恵奈はようやく髪を洗い終えて、シャワーを止めた。
そして今度はコンディショナーを使って、髪のトリートメントを始める。
手持ち無沙汰になった俺は、ただひたすら浴槽に湯が張っていくのを眺めていた。
「ねぇ、そんなに湯船見てて何が楽しいの?」
別に楽しいわけじゃない。萌恵奈の方を見れないだけ!
「まあ、普段あんまりまじまじと見たことないから」
適当に理由をでっちあげておく。
「ふぅーん。変なの」
と萌恵奈は言いつつ、再びシャワーを出してコンディショナーを軽く洗い流す。
さぁて、そろそろ萌恵奈の方を向く準備を整えますかね。
俺は深く深呼吸を吐いて、心を落ち着かせる。
下腹部に巻いたタオルからは、俺のモノが既にもっこりもこもここんにちはしそうになっていた。
鎮まれ、俺の煩悩。鎮まれ、俺の息子よ!
俺は瞑想するように瞼を閉じて、何度も深く深呼吸する。
よしっ、覚悟は決まった!
丁度シャワーの音も止まり、再び浴槽にお湯が溜まっていく水流の音が風呂に鳴り響く。
「柊太、背中洗ってー」
きたっ!
萌恵奈に呼ばれ、カッチカッチからコリコリくらいには正常な状態へ戻った時、俺は意を決して萌恵奈の方を振り向いた。
萌恵奈は顔だけこちらに向けて、ハンドタオルを手渡してきていた。
俺は萌恵奈からハンドタオルを受け取って、萌恵奈の後ろに膝をついて立て膝の体勢になる。
受け取ったハンドタオルで、白くてきめの細かい萌恵奈の背中へ、ハンドタオルを押しやり、ごしごしと洗っていく。
うわっ、タオル越しでも伝わるふにふにもちもちした萌恵奈の肌の柔らかさ。
加えて、トリートメントしたばかりの萌恵奈の髪の毛から香る匂いが俺の脳を直接刺激してくる。
あぁ、ヤバイ。このまま後ろから萌恵奈に思いきり抱きついて、萌恵奈の身体を撫で回してまさぐりたい!
コリコリからカッチカチに戻っているキャノンを萌恵奈に押し当てぬよう気を付け、抱きしめたい衝動を何とか抑えつつ、萌恵奈の身体を洗い終えた。
ふ、ふぅ……な、なんとか耐えた。
「ほれ、洗い終えたぞ」
「ありがと。じゃあ次、柊太の身体洗ってあげるね」
お礼と共に続けざまに言われた言葉に、俺は言葉を失う。
はっと我に返り、俺は両手を前に出して手を振る。
「いやいやいや、俺はいいって。自分で洗うから! 先に身体洗い流して湯船で待ってろって!」
「まだ湧いてないし! それに、遠慮なんかしなくていいの。これも、スキンシップの一環なんだから」
遠慮じゃない! 欲望に抗えないから避けてるだけ!
「いいから、ほら座った座った」
萌恵奈は不意に立ち上がると同時に、くるっと振り返り、惜しげもなく前面を見せつけてきそうになり――俺はばっと瞬時に目を閉じた。
あっ、あぶねぇ! 今真正面から萌恵奈の裸体なんて見たら、一瞬で俺の理性が崩壊するところだった。
「ほら、早く!」
萌恵奈に急かされるように、俺は手で椅子の場所を把握して、目をつぶったまま器用に座った。
はぁ……ここまできたら、もう何とでもなれ。
俺は半ばあきらめて、この状況を受け入れざるをえなかった。
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