Hoedus Secundusー4ー

 ドクシアディス達に手伝ってもらいつつ、船の飛び移りの訓練を終えると陽はとっぷりと暮れていた。

 訓練後にはキルクスの家で休んだが、エレオノーレとは顔を合わせなかった。

 チビと仲良くしているらしいとキルクスは言っていたので、そうか、とだけ答え、ドクシアディス達と海戦の基本戦術に関する討論を夜中まで続けた。

 だが、意外な事に、新発見はあまりなかった。今更ながら、十年以上昔に古くならない戦術を厳しく教えてくれたレオの先見の明というか、用兵術には感服させられるな。


 結局、翌昼に船に乗る時まで、エレオノーレは見かけなかった。

 ただ、まあ、海上に出ても、航法に関する話や糧秣の消費量に関する取り決めなど、矢継ぎ早に各部署の人間から相談を持ちかけられ、エレオノーレとじっくりと話す機会には恵まれなかったが。

 どうも、コイツ等は訓練はしているようだが、実戦経験は皆無に等しいらしいな。俺だって、戦闘は得意だが、兵の指揮は始めてなんだが――まあ、それを顔に出すわけもないし、ここは玉座を目指すための最初の一歩だ。ラケルデモンの普通教育の内容と、レオに昔教わった知識で切り抜けるしかない。


 ……そういえば、こんなにエレオノーレと離れているのは出会ってから初めての事だな。

 なんとなく……、斜め後ろにいつも居るヤツがいないのは、なんだか不思議な気分だった。

 エレオノーレと出会う前には絶対に感じなかった気持ちに苦笑いで蓋をして、目の前のするべきことの処理へと俺は思考を集中させた。


 ちなみに、二度目の船旅だからか、今度は俺も船酔いは起こさなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る