29.苦労してこれっぽっちのDPかよ、運営に文句言ってやる。
前回までのあらすじ。
侵入者が3階層までやってきた。ボス部屋で迎え撃つことにする。
◇ ◇ ◇ ◇
・メルシィ視点
私は王国聖騎士、そしてダンジョンマスター・テイマーのメルシィです。
今回攻略するダンジョンは、『引きこもり拠点』というやる気のない名前のダンジョンです。
ダンジョンマスターは伊乃田命という者らしいです。
ダンジョンの内装は、見たことのない物で、私の連れているダンジョンマスターによれば、『近未来』タイプだそうです。
ダンジョンマスターは、使い切りダンジョンマップ作成スクロールという物をDPで買って、1階層ごとに地図を作製してくれます。
これで一切迷わずにダンジョンを進むことが出来ました。
1つ1,000,000DPするらしいですが、知ったことではありません。
1階層のボスは故龍ファフニールを再現した魔獣でした。
弱点が心臓という部分まで再現したようで、ダンジョンアドバイザー12人がかりで心臓を狙い、瞬殺しました。
おそらく奴がこのダンジョンの切り札で、他は大したことないだろうと思っていた矢先、2階層ではとんでもない仕掛けに出会いました。
まずボス前の部屋。高温によってダンジョンマスター数人が焼けてしまいました。
すぐに回復させ、全員を高温耐性の魔法で固めました。
ですが、2階層のボス部屋は恐ろしく低温だったのです。
高温耐性の魔法を使っている最中は、冷気耐性の魔法は使えません。
ダンジョンマスターはよほど性格が悪いようです。
おまけにボスの蜘蛛は平気そうな顔で攻撃してきました。
寒さに耐性があるのでしょう。
聖騎士の鎧には冷気耐性もあるのですが、ダンジョンマスターやダンジョンアドバイザーの中には行動不能になる者もいたみたいで、行動可能な者が冷気耐性の腕輪をDPで購入し、どうにか体勢を立て直し、2階層のボスを撃退しました。
このダンジョンは出来て1ヶ月もたたないと聞きますが、ダンジョン内部はかなりトリッキーで、おおよそ初心者の作った物とは思えない出来でした。
先兵のダンジョンマスターはダンジョンの仕掛けによって、何度も死にそうな苦しみに遭いました。
普通の人間のパーティなら何度全滅したことか。
ダンジョンマスターは死なないものの、彼らは鍛えてないのか、おそろしく打たれ弱いです。
ダンジョンマスターが行動不能になれば、ダンジョンアドバイザーに言うことを聞かせられなくなるため、かなりの痛手となります。
ま、行動不能になったダンジョンマスターは回復させてまた働かせたり、回復しきれない者は私の肉壁として有効利用させてもらいますけどね。
ここのダンジョンマスターも、いずれ私の配下に加えてあげましょう。
かなり優秀なようですし、楽しみです。
おっと、もう3階層のボス部屋ですね。
3階層のボスに、先ほどの2階層のボス、そして……配下のダンジョンマスターによれば、あの大蛇は10階層のボス?
もしボスを一斉にけしかけるつもりなら、先ほどの機械ファフニールも蘇生して使ってくるはずです。
つまりダンジョンマスターのDPは既に枯渇したものと思っていいでしょう。
ふふふ、ダンジョンマスターも、手札がついに尽きたようですね。
ここを乗り切れば、さすがにボスラッシュも終わりでしょう。
(実はまだ6体ほど控えているのだが、彼女がそれを知る由もない)
「さあ皆さん! ここが
頑張ってください!」
「「「うおぉおおおおお!」」」
声を上げちゃって、ダンジョンマスター風情が、生意気です。
彼らは自分が可哀そうな人形さんだと気づかずに、生涯を私に、そして国に捧げるのです。
ああ、早く帰って風呂に入りたいですね。3階層にいるボス達をさっさと倒して、ダンジョンマスターを魅了して、帰りましょう。
◇ ◇ ◇ ◇
・命視点
「なぁ、ダンジョンアドバイザーって死ぬの?」
――――――――――――――*――――――――――――――
普通に死にますよ。私みたくダンジョンと一体化している者は死にませんけど。
ちなみに倒しても追い出してもDPは貰えません。
――――――――――――――*――――――――――――――
「でもって、DP使えば蘇るんだよな?」
――――――――――――――*――――――――――――――
そうですね。
――――――――――――――*――――――――――――――
「厄介だよなぁ」
俺の嫌な予感というのはこれだ。
何度も蘇ってくる強敵がいるということ。
機械ファフニールも、深ちゃんもダンジョンアドバイザーを何体も葬ってはいるのだ。
しかし、倒した先からダンジョンマスターが復活させている。
つまりだ。
「ダンジョンマスター達を先に無力化する!」
俺はふんたーを操り、ダンジョンマスターの首をはねる。
ダンジョンマスターは死なないが、首と体が離れたので、声が出せず、出血多量で気絶する。
「ふふ、スキル【ブリンクテレポート】は便利だな。
一瞬で敵の間合いにテレポートすることが出来る」
【ブリンクテレポート】は、視覚の届く場所に瞬時にテレポートできるスキルだ。
ゲームだったらブリンクテレポートした瞬間は無防備なのだろうが、ふんたーの場合、斧を振り下ろしながら瞬間テレポートしてそのまま敵を切り倒してしまう。
3人ほど行動不能にしてやった。
「この調子で、おっと」
敵チームのリーダー格っぽい、聖騎士鎧の金髪女が切りつけてくる。
相手の手数が多く、斧で応戦するのは厳しいので、ブリンクテレポートで距離を取る。
そのまま斧を振り回しブリンクテレポートで接近。
しかし読まれて避けられる。
バッハは、ダンジョンアドバイザーのドラゴン達相手にフ○ンネルで攻撃している。
5体のドラゴンが倒れる。だがダンジョンマスターが復活させてしまう。
「グォオオオオオオ(ちょこまかと、うるさいハエぞい)」
げ、バッハが不機嫌になった。
彼の様子をよく横の部屋から眺めている俺は、この次の行動を予想し恐怖した。
「ブリンク! 深ちゃんを回収、ブリンクで大部屋から離脱!」
ふんたーは深ちゃんを担いで大部屋から逃げる。
「グォアアアアアアアアアア!!!(ふん!)」
バッハの全身から全方向へレーザーが放たれる。
大部屋全体が白いレーザーで焼かれる。
大部屋から漏れたレーザーを斧でガードし、ふんたーと深ちゃんを守る。
それでも体力が1割削られる。
攻撃が止んだので、大部屋へ戻る。
黒コゲのボールが浮いていた。
普通の人間ならコゲどころか跡形も残らないはず。
ということは……
ぽろり、ぽろりと黒コゲがはがれる。
予想通り、焦げているのはダンジョンマスターだった。
あの聖騎士が肉壁として使ったようだ。
中にいた数人のダンジョンマスターと聖騎士は無事だったようだ。
ダンジョンマスターが回復薬のようなものを黒コゲにふりかける。
また、ダンジョンアドバイザーを復活させる。
やれやれ、キリがないな。
――――――――――――――*――――――――――――――
そうでもないようですよ?
――――――――――――――*――――――――――――――
おや? 回復薬をかけても黒コゲに変化がないぞ?
もちろんそのまま様子見などせず、俺操るふんたーは隙だらけのダンジョンマスターの首を2人ほどはねる。
ダンジョンアドバイザーはバッハがコツコツ減らしている。
焦げて倒れたダンジョンマスターはそのままになっている。
何故? 回復失敗か?
――――――――――――――*――――――――――――――
彼らがふりかけたのは、回復薬ではなく毒薬です。
――――――――――――――*――――――――――――――
毒薬? 何でまた。
――――――――――――――*――――――――――――――
すり替えられていますね。彼らによって。
――――――――――――――*――――――――――――――
彼ら?
「「「イーッ!」」」
ダンジョンマスターのアイテム入れからイチニーサン3人組みが
顔を出す。そして目にもとまらぬ速さでどこかへ消えた。
ああ、回復アイテムを毒薬とすり替えたのか。
ダンジョンマスター達の油断を誘うために、3階層までは
わざと手を出さなかったんだろう。やりおる。
――――――――――――――*――――――――――――――
ミルフィーユの持ち物も、彼らが回収していたみたいです。
よかったですね。
――――――――――――――*――――――――――――――
深ちゃんがダンジョンマスターを頭からかぶりつき、体を食いちぎる。
わぉ、ぐろっきー。
動けるダンジョンマスターはもういないようだ。
「な、なぜです……こんなハズでは……」
聖騎士が周りを見て、信じられないという顔をしていた。
彼女へ斧を振る。剣で受けられるが、バッハの光子銃の経口がこちらを向いている。
ふんたーがブリンクテレポートで離脱した瞬間、さっきまでふんたーが居た場所もろとも極太レーザーが通る。
聖騎士はこんがり焼けたようだ。
――――――――――――――*――――――――――――――
マスターの勝利です。
――――――――――――――*――――――――――――――
ま、作戦をあらかじめ立てた上、ボス3体も投入しても勝てないのならクソゲーだろ。
――――――――――――――*――――――――――――――
討伐 人間・Sランク冒険者(15,000DP)
手持ち4,909,020DP→4,924,020DP
――――――――――――――*――――――――――――――
あれだけ苦労してこれっぽっちのDPかよ。運営に文句言ってやる。
◇ ◇ ◇ ◇
今回の成果。
増減前4,909,020DP
―――――
収入15,000DP
支出0DP
―――――
現在4,924,020DP
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます