30.というか最初から全員に配れよ、と運営に文句言ってやる。


前回までのあらすじ。

侵入者リーダーを討伐した。



◇ ◇ ◇ ◇



・冒険者ジズ視点


1階層での戦いは壮絶だった。


俺達3人は足手まといだと実感し、階層エレベーター前の監視役をすることにした。


2階層を突破したと連絡があり、2階層の階層エレベーター前にも1人、監視役としてダンジョンマスターを置いているらしい。



「3階層のボス討伐報告、遅いな……」


「ひょっとしてやられたんじゃない?」


「冗談じゃねーぞ。あの人が無理なら、誰が挑んでも無理だろーが」



俺の独り言に、リヴァイアとベヒムスが返す。


そう。メルシィ様率いるダンジョンマスター軍隊は、国の最高兵力の一角。


それが簡単に倒されるなら、もはや国の全兵を投入しても勝てるかどうか怪しくなってしまう。


ダンジョンマスターは、魔獣に心を売った悪魔だ。


1人として許されるものではない。


仲間を、同士を殺した罪を、その労働によって永久につぐなわせるのだ。



「にしても、この階層エレベーター、完全にダンジョン専用ねぇ」



階層エレベーターを所持しているというだけでも、もはや中級以上のダンジョンと言える。


そして、エレベーターの種類は3種類のうち、ダンジョン内の配下のみ使用可能なタイプ。


つまり侵入者は容赦なく葬るということだ。

階層エレベーターを見るだけでも、ダンジョンマスターの性格がよく分かる。

かなり好戦的な人らしい。



「猫ちゃんの死体、埋めてきてもいい?」


「今は仕事中だ」


「にしても、デブい猫だな。

一体何食ったらこんな太くなるんだよ」



足元には白猫が首元を切り裂かれて転がっている。

ダンジョンアドバイザーである竜によるものだ。


野性の猫にしては発育が良すぎる。

おそらくここのダンジョンマスターのペットだろう。


こいつが死んだことを知ったダンジョンマスターは怒り、冷静な判断が出来なくなるだろう。


……いや、



「どうせDPを使えば復活させられる。

それを今していないということは、それを忘れるほど怒っているか、あるいは」


「それどころじゃないほど忙しいか、もしくは猫1匹くらいどーでもいいってところじゃねーの」


「ごめんね猫ちゃん……ダンジョンマスターの洗脳が済んだら、生き返らせるように頼んでみるからね……」



ダンジョンマスターは配下をまるでゾンビみたく何度も蘇らせることが出来る。

ボスは1日1体までらしいが。


なのでダンジョンマスター軍はボスを用いずダンジョンアドバイザーを用いている。


アドバイザーだけでもSランク級なので、困ることはない。


何度でも復活してくるSランク級のダンジョンアドバイザーが25体。


これを片づけられるというのであれば、それはもう大型ダンジョンに並ぶほどの実力者ということになる。


発生して1ヶ月も経たないこのダンジョンが?

ははは、まさかそんな。


……ん? 何だ?



「……! 階層エレベーターから誰か出てくる!」「……」「……」



出てきたのは、確かメルシィさんの支配していたダンジョンマスターのひとりだ。

ダンジョンアドバイザーの魔法使いも伴っている。


良かった、敵が現れるのかと思った。


……ん? おかしくないか?



「何故てめぇがこの階層エレベーターを使っている?!

これは敵しか利用できないハズだぞ!」



ベヒムスの言う通り、これは配下用エレベーターだ。

俺達は使えないはず。



「そうだ。ダンジョンマスターの命さんや、その味方のみ使えるエレベーターだ」



ダンジョンマスターの男が答えた瞬間、リヴァイアが倒れる。



「つまりハ、そういうことでス。

今日に限リ、命氏の味方トいうことでス」



ビリッ! ダンジョンアドバイザーの電撃で、俺とベヒムスも意識を失った。



「さあ、命さんにこいつらをどうするか、決めてもらおう」



◇ ◇ ◇ ◇


・命視点


あの後、操られていたダンジョンマスター達の魅了状態は解けて、全員女神パチモからメールで魅了耐性の腕輪を貰っていた。


というか最初から全員に配れよ、と運営に文句言ってやる。

いや言った。

他のダンジョンマスターには、パチモから改めて配られるそうだ。


イチニーサンは、彼らからDPを絞り取るつもりだったが、それだと彼らがダンジョン経営できなくなるので、おとなしく帰ってもらった。


イチニーサンは今まで何やってたかというと、キューブやスフィアと共に中級ダンジョン8か所に潜り込み、そこのダンジョンマスターのアイテムを勝手に疑似DPに変換して、疑似DP稼ぎをするという大がかりなことをしていたそうだ。


その最中に、いくつかのダンジョンマスターの動向がおかしいことに気づき、俺のダンジョンへ攻める予定のダンジョンマスターのアイテム袋に忍び込んでいたとのこと。


つくづく敵に回すと恐ろしいアイテムだな。


あと、ダンジョンマスターの1人は、帰る前に侵入者の冒険者3人を差しだした。

Cランク冒険者らしい。


こんな奴らじゃDPの足しにもならない。


ま、使えなくはないか。



「……ん? ここは……」


「よぉ、起きたか」



冒険者の1人が起きる。



「魔法使用不可の鎖で縛られているらしいから、魔法を使おうとしても無駄だぞ。

にしても、こんな魔道具もあるとは、異世界って便利だな」


「……! お前は誰だ!」


「伊乃田命|(いのだまこと)。ダンジョンマスターよ、リーダー」


「俺達ぁ、捕まっちまったってこった」



先に起きた2人には既に自己紹介を済ませている。



「俺達に何の用だ。俺達を捕まえたところで、大した情報もコネも持っていないぞ」


「何の用と言われても、そっちから侵入してきたんだし、おまけに生きたまま捕まえたのは俺以外のダンジョンマスターの1人だしなぁ。どうしようか?」


――――――――――――――*――――――――――――――

好きにすればいいと思いますよ?

ダンジョン内に監獄を作り、そこに閉じ込めて、いたぶり続けてDPを搾取したりとか。

――――――――――――――*――――――――――――――


「前から思ってたけど、人工音声さん、容赦ないよな」


「誰と話している?」



ジズは俺を不審な目で見て聞いてきた。



「おっと、俺にしか聞こえないんだっけか?

人工音声さん、こいつらに声が聞こえるように喋ってくれない?」


『これでいいでしょうか?』


「ひゃぁっ?!」


「誰だ!」


「俺のダンジョンアドバイザーの人工音声さんだ」


「人工音声?」



3人の冒険者は顔を合わせ、首を振る。



「そんなダンジョンアドバイザー、聞いたことないな」


「人工音声を選んでる奴って、他にいないわけ?」


『少数派ですね。他の者と比べ私のメリットは死なないことくらいですし』



ふーん。



「ま、どうでもいいか。それよりお前ら、ゲームしようぜ」


「……ゲーム?」


「審判は人工音声さんだ。

ルールは、ターン制で俺から3人へ、3人から俺へ質問し、それに答える。質問には必ず答えること。

パスは1度まで。嘘をついたら負け」


「……負けたら?」


「俺が負けたら、このまま無事に帰してやるよ。

お前達全員が負けたら、そうだな、さっきの戦いで消耗したDPx3だけ働いてもらおうか」


「審判の人工音声は、俺達が嘘をついているかどうかをどうやって判定するんだ?」


『汗、言葉の抑揚、脳波、目の動き、挙動、体温などから総合的に判断します。

命さん、よろしいのですか?』


「ああ、俺に対しても遠慮なく審判してもいいぞ。

例えば、このダンジョンは8階建である」


『嘘ですね。10階層まであります』


「とまあ、俺が嘘をついたら嘘だと言ってくれる」


「俺も審判をしてもいいか?」



ジズが審判を申し出てくる。



「いいけど、公正公平でないと判断した場合、問答無用で負けにするからな?」


「ああ」


「なら、ゲームスタートだ」




◇ ◇ ◇ ◇



今回の成果。


増減前4,924,020DP

―――――

収入0DP

支出0DP

―――――

現在4,924,020DP



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