19.俺のやり方に文句があるなら、運営に文句言うぞ。


前回までのあらすじ。

ダンジョン改造屋に仕事を全部押しつけた。



◇ ◇ ◇ ◇




「キェェェエエエエエェエエエエ!(片付いたでー)」



機械ティラノの食い倒れが俺の部屋にやってきて、イビルホーネットの討伐が完了したことを知らせに来る。



「おう。ご苦労様」


「キャーキュキュキュ!(DP余ってるなら、

階層エレベーター買ってくれへん?)」


「階層エレベーター? 人工音声さん、リスト見せてくれ」


――――――――――――――*――――――――――――――

検索対象「階層エレベーター」結果1,000,000件以上

1.安物階層エレベーター(100,000DP)

2.高機能階層エレベーター(600,000DP)

3.配下用階層エレベーター(300,000DP)

……

――――――――――――――*――――――――――――――


む、いくらか種類があるみたいだ。

ってか、1つだけ購入すればいいのか?


――――――――――――――*――――――――――――――

はい。1つで全階層を繋ぐエレベーターが設置可能です。

階層エレベーターは、敵味方関係なく無制限で使える物、味方のみ使える物、細かい設定が行える物の3種類があります。

侵入者が使用する場合、以前探索したことのある階層まで移動することが出来ます。

――――――――――――――*――――――――――――――


なるほど。用途別ってことだな。


敵味方関係なく無制限で使えるやつは上級者向け。

味方のみ使えるやつは初心者向け。


細かい設定が行える高機能のやつは、例えば敵の使用回数を1日1回にして、ダンジョン帰還ギミックで稼ぐ、みたいに使うことが出来るな。

初心者から上級者まで幅広く使えそうだ。値が張るけど。



「配下用階層エレベーターを1つ購入だ」



俺は味方のみ使えるやつを購入する。


安価な安物階層エレベーターは魅力的だが、それだと侵入者に使用されてしまう。


そうすると俺の引きこもり生活を邪魔される可能性が高くなる。


ある程度DPが溜まった今、ここはケチらずいこう。


――――――――――――――*――――――――――――――

ケチらないのなら高機能階層エレベーターがおすすめなのですが。

――――――――――――――*――――――――――――――


いや、俺の味方だけ利用できりゃいいんだから、そんな高級品使うまでもないだろ。


――――――――――――――*――――――――――――――

しかし……

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俺のやり方に文句があるなら、運営に文句言ってダンジョンアドバイザーを変えてもらうぞ。


――――――――――――――*――――――――――――――

出過ぎた意見をして、申し訳ありません。

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――――――――――――――*――――――――――――――

購入 配下用階層エレベーター(300,000DP)

手持ち5,621,490DP→5,321,490DP

――――――――――――――*――――――――――――――


「で、搭乗口が各階層入口に来るように設置」


――――――――――――――*――――――――――――――

配下用階層エレベーターが設置されました。手持ち1→0

――――――――――――――*――――――――――――――


そういや、階層を増やした場合はどうなるんだ?


――――――――――――――*――――――――――――――

増やした階層に、搭乗口が追加されます。

――――――――――――――*――――――――――――――


ダンジョン拡張の度にエレベーターを買う、みたいなことにはならないみたいだ。

もしそうなら運営に文句言ってたであろうが。



「キェェェエエエエエェ!(さーて、ワイはまた出かけるか)」


「また? ゆっくりすればいいのに」



俺は中断していたギャルゲを再開しつつ答える。



「キャッキャッキャッキャ!(サイバーファームがあったやろ?

そこで増殖させるのに良さげな魔獣を探しに行くんや)」



人工音声さん、もう一度DP入手方法を表示してくれ。


――――――――――――――*――――――――――――――

「自然獲得」……1日の始めに500DP

「ダンジョン内での敵死亡」……対象の危険度に応じたDP

「ダンジョン内での敵の負傷」……その日に死亡せず負傷させた総計HPの0.1%のDP

「敵がダンジョンの帰還地点から帰還」……対象の危険度に応じたDP/5

――――――――――――――*――――――――――――――


「つまり、繁殖力が高くて、危険度が高い魔獣もしくは最大HPが高い魔獣を捕まえて繁殖させるわけだな」


「キェエエェエエエエエエエ!(そういうワケや。

持続的なDP入手が可能になるさかい)」


「どんな魔獣を捕まえる予定なんだ?」


「キエエエエエェエエエ!(災厄ネズミを捕まえる予定や)」



聞いただけでもヤバそうだな、その魔獣。



「キエエェエエエエエエ!(昔、疫病をまきちらし

多くの国を滅ぼしたとされている、Eランクの魔獣や)」


「危険度は大したことないんだな」


「キャッキャッキャッキャッ!(集団やとAランク扱いやけどな。

そしてネズミ殺しの魔法が出来た今、その魔獣は絶滅してしもた)」


「絶滅したのなら、捕まえられないんじゃ?」


「キィエエエエエエエェエエエ!(そうや。しかし、野性の人食いネズミを3段階進化させたら災厄ネズミや)」


「なるほど」


「キェェェエエエエエエケケケケケ!(進化したネズミ同士の子どもは、進化済みの子どもが生まれるさかい。

つまりオスメス2体だけ進化させたのを用意するだけや)」


「ほぅ」



進化したネズミが際限なく増えると、獲得DPがかなりヤバいことになりそうだ。



「キェェェエエエエエエエエエ!(ほな行ってくる。

帰りはいつになるか分からん)」


「おう。気を付けて」



食い倒れが部屋から出ていく。

入れ替わりでミルフィーユが入ってくる。



「にゃ(ただいま)」


「お帰り」


「にゃ!(ダンジョンが立派になってて驚いたよ)」


「どうでもいい」


「にゃ(ところでボクの部屋にいる銀色ゴブリンは何?

食べていいの?)」


「食うな食うな、仲間だ」


「にゃ(彼らにも部屋作ってあげたら?)」


「えー、DPがもったいない」


「にゃ(チケット余ってないの?)」


「イチ、ニー、サンに全部あげちゃったからなぁ」


「にゃ?(え? 誰それ?)」



ああそうか。配下にはダンジョン情報が自動で伝わるけれど、俺の持っているアイテム情報までは分からないのか。



「アンラッキーアイテム【ダンジョン改造屋】って奴らなんだけど」


「にゃ(何それ? 聞いたことないなぁ)」


「俺の代わりにダンジョン運営してくれるアイテムなんだ」


「にゃ(ふーん。そいつらはどこに?)」


「さぁ? どこか行ったみたいだな」



ダンジョンマップを、アイテム情報を載せて表示してくれ人工音声さん。


――――――――――――――*――――――――――――――

ダンジョンマップを表示しました。

――――――――――――――*――――――――――――――


ほう。1~9階層のおおまかな改造は済んでいるみたいだな。

ボスも各階層に配置しているみたいだし。トラップもそこそこちりばめられている。


で、ダンジョンマップにはアンラッキーアイテム【ダンジョン改造屋】が見当たらない。

外に行っているのか?


――――――――――――――*――――――――――――――

そのようですね。目的は不明ですが。

――――――――――――――*――――――――――――――


ま、そのうち帰ってくるだろ。



「出かけているらしいな」


「にゃ(いいの? チケットを持ち逃げされたんじゃ?)」


「ま、裏切られたらその時だ」



実は彼らは、裏切るどころか大がかりなことをしていたのだが、この時の俺は知る由もない。




◇ ◇ ◇ ◇



今回の成果。


増減前5,621,490DP

―――――

収入0DP

支出300,000DP

―――――

現在5,321,490DP



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