第2話

学校に着き、入口でこの学校の生徒から紙を渡される。クラス分けと出席番号が書かれた紙だ。諒と咲希は同じクラスだった。咲希と同じクラスになれた。平然を装ったが、諒がこれまでの人生で1番神を信じ、神に感謝した瞬間だった。

教室に案内されたあとクラスごとに並ばされ、順番に体育館に入場していく。体育館には保護者も含め沢山の人がひしめいていた。


諒と咲希は出席番号が前後で、隣同士だった。

ピッタリとくっつけられたパイプ椅子に座らせられ、諒は必死に耐えていた。

咲希の匂いに、必死に耐えていた。

咲希が臭いとか香水とかそういう話ではなく、咲希が元から纏う香りに諒は、素直に言うと、興奮していた。長いこと関わりがなかったせいか、年を重ねて咲希への愛が重たくなったせいか、耐性が無くなっていた。彼女の匂いだけを異様に諒の鼻は敏感に察知する。ここまでの道のり、彼女にあまり近づかないようにしていたのに、こうやって隣に座らされ、諒の心拍数と体温は上がり続ける。


諒の鼻に、生暖かいものが流れる。ぼやぼやした頭ではそれがなんなのかも分からず、諒は鼻を擦る。

血だ。

鼻血だ。

「諒くん、鼻血!!大丈夫!?」

咲希が声をかけるが、諒は上の空のまま鼻血を垂らし続け、新品の制服を汚す。咲希が何とかしようと近づけば近づくほど逆効果だ。鼻血がとまる訳が無い。

入学式の最中、諒は保健室に連れていかれた。

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