第27話-打てるのだろう? 魔術討撃をッッ!?-
「ハァッハァッハァッ――」
俺はトイレ前まで駆け抜け、小悪魔リープの誘惑からなんとか逃れられた。
あの甘い香り、女神のように優しい性格、クリームみたいな白くて柔らかい肌。
何でリープはあそこまで密着してもなんとも思わないのだろうか。
俺は余裕で反応してしまったわけだが、実は男性として見られてないとか?
一目惚れしたとか、色々と好感があるように接してきてくれてるけど、本当の所はどうなのだろうか……。
今朝突然学園長室で押し倒してきた女の子、リープ。
メルベイユ学園の隅々まで一緒に回って色々雑談したり、一緒に御飯食べたり、リープの美味しいサンドイッチを食べさせあって……。
(一目惚れしてしまっただけですわ!)
その言葉を思い出すだけで、ドキドキと心臓の鼓動が止まらない。
――くそっ、しっかりしろ
今日合ったばかりの女の子を、何意識しているんだ俺!
そう考えていると、突然後ろから――
「ナニだけに今日合ったばかりの女の子を何考えてるんだ俺、か」
――!? この声は――
「学園長ッ!? いつの間に、背後にいたんですか。気配は全く感じることができなかったんですが……」
「そう驚く事はあるまい如月煌。それにしても全く気づかんとは、一体ナニを考えていたのかね。顔が赤いぞい。真っ赤なトマトのようだ」
「が、学園長こそ、どうしてこんな場所にいるんですか、って車椅子?」
「おや、我がここにいては不自然かね。少し煙の臭いがしたのだよ。我はもう歳でな、車椅子がないと動けぬ。時に如月明。ウハウハハーレム学園生活を楽しんでいるかね」
「ウハウハ学園生活どころか、軍隊に入ったみたいで辛いんですが」
「今の貴君なら、どう答えるか確認しておこうと思ってな、今朝の解答がほしい」
そう言い終えると、学園長の瞳の色が変わった。
あと目つきもだ。鋭いようで怒っているように見える。
「今朝の解答ですか? 何かありましたっけ」
「メルベイユ学園の一人を貴君の好きなように良いという件だ。未来視を発動させるには興奮状態でなければなかろう。好きな時に使用可能にしとかなければこれから大変だ」
学園生の一人を好きなようにしてもイイ、ですって……。
「――はぁ……はぁ……はぁ――」
――何故だか、鼓動が早くなる
「今朝のライトニングなんでどうかね? もう一度言うが、彼女は貴君を運命の相手と認識しておる。今晩、フィアンセの契を結んでも良いのだぞ? 彼女の父が許すかどうかは知らんが、我は許す」
――意識をしっかりしろ。 俺は、そんな誘惑になんか負けない。
――負けてたまるか
「――学園長」
「どうした決まったか?」
「いや、
「ほう……と、言うと?」
「俺とリープ、いや、フィーネも出会ったばかりだ。出会って間もないのに俺がそう簡単に手を付けると本当に思ってるのか」
「おいおい、ちょっと待ってくれぬか。これでは
「学園長……俺とリープに何か魔法を掛けたんだろ! 違うかッ!!」
何かの魔法が掛って無ければ、合ったばかりの人をここまで思うわけがない!
「ほう、そう来たか。それは想定外だった」
そういうと、学園長は急に口元を緩め、
「ふふふふ、ふふふふ、ははははははふぁっはっはっはーーーーーっ!」
と高笑いをした。
やはり、奴は想像もできない何かを企んでいる。
「面白い推察だ如月煌。仮に私が魔法を掛けた、と言ったらどうする気かね?」
「その魔法を解いてもらう。そして、リープと俺を正気に戻してもらうぞ」
「イヤだ、と我が申したらどうなる?」
「人の想いを踏みにじる奴は、たとえ神だろうと俺は許さない。ここで討たせてもらう」
相手は車椅子だ。先手を取ればなんとかなる。
相手次第だ。どうでる……。
「やれるものならやってみるがいい如月煌!! 貴君とその彼女の精神を操ったこの我を! さぁ来るがいい! 打てるのだろう? 魔術討撃をッッ!?」
――状況開始
俺には未来視がある。
俺が魔術討撃を放つ事ができる
「そうだな。仕留めてやるよ!!」
俺は集中するため、深く、より深く深呼吸をした。
――魔術討撃法。
――右腕を構え、魔力粒子を手で掴み取るように優しく包み込む。
――包み込んだ粒子の塊を維持して、腕に一瞬力を入れる。
――粒子が発射されるイメージをする。
俺は、未来視で視ることが出来た鮮明なイメージ映像通りの動作をする。
右腕と手首の力の入れ方、指一つ一つの関節の曲げ方、魔力粒子の集結――
左手で右腕を抑え、粒子の収集振動によるブレをなくし正確に相手へ命中させる。
「えっ!? まじかよ……」
気付いたら、俺の右腕を通り越して、掲げている手の先に、青のライトエフェクトが。
――空中に浮いていた
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