第26話-も、もも、もう限界だよ!-

「はいっ」「はい」


 フィーネは細くて艷やかな右腕を、リープはミルクのような細い左腕を岩へ向ける。

 すると、二人の小さい手のひらの僅か先に何かが集まり始めた。

 リープには黄色いライトエフェクトのような粒子が、フィーネには水色のライトエフェクトの粒子が一瞬で集結する。


「穿て!」「発射!」


 あれが魔力粒子? 集結して圧縮、そして発射が魔術討撃のサイクルか。

 二人がそれぞれの光弾を大きな岩へ向かって討撃。

 刹那、凄い破裂音が響き、大きくて頑丈そうな岩が崩れた。


 ――おいおい、すごすぎだろ・・・


 あれを間違えて人に当ててしまったら、とんでもないことになりそうだぞ。


「如月。あれが魔術討撃だ。正直私は、魔術討撃は一重陣魔法と同等の力を秘めていると考えている。使いどころを誤れば、器物破損は当然として最悪殺人もしてしまうかもしれない。しかし、メルヴェイユ学園の制服は魔術討撃を魔力はもちろん物理的衝撃もかなり軽減するものだ。学園生に対しては急所を狙わなければ死にはしない。それよりも、一般人に対しての使用は厳禁だ。わかったか」


「分かりました」


「チームFの訓練内容は如月が魔術討撃を自在に使いこなせるようにすることだ」


「「はいっ!」」


 フリード先生は俺たちに言い残し、他のチームの方へ歩いて行った。


「で、具体的にどうすればそれができるようになるの?」


 フリード先生を追っていた目をフィーネとリープへ向ける。


「そうですわね。まず、あきらさんは右利き左利きどちらですの?」


「右だ」


「では、右手をあそこにある岩へ向けてくださいな」


「こうか?」


 俺はリープとフィーネが破壊した岩の隣にある新品同様の岩へ手を向けた。


「う~ん。ちょっと堅いですわね。こうして――」


 突如、リープが後ろから、俺に抱きつくかのように右腕を両手で優しく包んだ。


「んっ!?」


 背中に、リープの柔らかく程よい二つの弾みが接触してるでないですか!

 これは、衛生上良くない!

 ……まずい、興奮してきた


「あきらさん。もっと緊張を和らげてください。ゆっくり、優しくお願いしますわ」


 リープの柔らかく小さな手と腕が俺の腕に蛇のように絡みついてきた。後ろを少しでも振り返れば、リープのふわふわ髪の毛に接触してしまいそうな距離。オレンジの香りがするこがね色のふわりとしたリープのロングヘア。


 ――ドキッドキッ


 甘い息がするリープの話し言葉に俺は、もう我慢できない!


「ここをこうして、ピンと伸ばさないで、さきっちょの力も抜いて――きゃわっ」


 リープがイヤラシイ声を上げた。


「あきらさん! 前かがみにならないでくださる? それではリラックスできませんわ」


「も、もも、もう限界だよ! ちょっとトイレ行ってくる!」


 俺は前かがみ且つ急ぎ足でその場を退散。


「あ、あきらさん! 大丈夫ですの? 顔が真っ赤でしてよ! わたくしも付いていきますわ――」

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