第2話 「夕暮れるうた」

ビルの頭を繋ぎ合わせて、弓形のラインを描く。

空のグラデーションは不均等で、出来事たちが絡み合う。

頬なでる風はさざめいて、舗道蹴る足元はやや軽い。

やあ。

グラデーションが変化する。

やあやあ。

だんだん近くなる。

出来事が薄く伸びていき、藍色の帯が深くなる。

ボロボロになった今日の鎧、空気を含んでやや膨張。

やあやあ、や。

脱ぐのはもうじき。


駅の雑踏に紛れると、私も騒々しい何かのひとつ。

甘酸っぱい匂いに惹かれては、恋しげに誰かを探してみる。

袖くぐる風は生温く、警笛のプァーが冴えわたる。

やあ。

グラデーションは変化した。

やあやあ。

だんだんこみ上げてくる。

出来事はひと筆さえも見あたらず、頭上いっぱいが群青のベタ。

擦り切れた今日の鎧、旋風に乗って舞い上がる。

やあやあやあ。

脱ぐのは、もうじき。

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