第28話 リゾートの腐乱死体
Sさんは学生時代よく海の家リゾートのバイトをしていたそうです。給料がバカ高いわけではないですが、住み込みで衣食住があり、なにより休日はがっつりマリンリゾートが楽しめるので、毎年バイトをしていたそうです。
その年は神奈川の湘南で働いていたそうです。休日にがっつりサーフィンを楽しみ夜のビーチを歩いていた時でした。
さすがに海へ出てる人こそ少なかったですが、散歩をしているカップルなんかはぼちぼちといて、その人影を見たときもそれほど気に留めてはいなかったといいます。
ただなんか足を引きずっているなと思ったそうです。このままだとすれ違うなと思ったところで最初の異変に気が付きました。それは異様な腐敗臭でした。
腐った肉の臭いをもろに嗅いでしまった様な臭いで、嗅いだ瞬間吐き気を覚えたそうです。
臭いの元はなんだと辺りを伺っていると、その人影がズリ……ズリ……と近づいてきます。
それは弱い月明かりに照らされて浮かび上がった腐乱死体の男でした。全身の肉がぐしゃぐしゃに腐っており、顔は原型をとどめていなかったと言います。
ひっと思わず声が出ます。腐乱死体の男(だと思う)は前を見据えたまま、ズリ……ズリ……と歩くだけでこちらに関心があるようには見えなかったそうです。
目が合ったような気がしないでもなかったですが、虚ろな眼窩に自分は映っていないようでした。
すっと横によけてすれ違ったそうです。そういえばサーフィン仲間から時々浜で出るという噂を聞いたことがありました。
出るというだけで、何が出るのかは皆口を噤んでいましたが、その理由がわかった気がするとSさんは言っていました。
とにかく臭いが……説明するときに思い出して辛いんです。
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