第17話 お兄ちゃん
これも以前エブリスタで書いた話だが、改めて書き直そうと思う。
僕が学生だった時の話だ。当時東京に出てきたばかりの僕は、兄の住んでいた一人部屋のアパートに転がり込んでいた。
風呂無し一部屋の言っては何だがボロアパートだった。
夏の蒸し暑い夜その部屋で眠ろうとしていた時である、トントントントンと子供の足音がした。その足音は僕の頭のすぐそばで止まった。
見てる……と思った。覗き込まれている様な視線を強く感じる。僕は固く目をつむり、かけていた毛布を頭からかぶりやり過ごそうとした。
しばらくすると、その気配はふっと消えた。僕は恐る恐る頭をあげて辺りを見てみる……。何もいない。
ほっとして、そのまま寝入った。しばらくしてうつらうつらとしている時だった。
突然隣で寝ていた兄が飛び起きて部屋の明かりを点けた。兄の顔は真っ蒼になっていて、冷や汗が額に浮かんでいた。
何事か兄に聞くと「小っちゃい女の子が胸にのしかかってきて、お兄ちゃん……お兄ちゃんって言うんだ」
金縛りにあった兄は俺はお前のお兄ちゃんじゃない、と必死に念じたというではないですか。
僕が聞いた足音の話をすると、兄は身震いをして怯えた。
アパートのあった東京、高田馬場駅から徒歩で少し歩いたところにあるその通りは、昔空襲で沢山の人が亡くなった場所なんだと言う。その通りにある建物では幽霊の目撃譚が頻発していた。
まだ彷徨っているんですかね? 僕たちは少女の冥福を祈り、お菓子と水をそっと部屋の隅に供えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます