第18話 人形に魅入られて
京都の怪談和尚の話であるじゃないですか、人形が帰るってやつ、供養のために寺に預けられた人形を持ち主が持って帰っちゃって、後になって人形が自分で帰ってきたって言う話。
まさにあんな話なんです。でも全部がちゃんと説明できる出来事でも、やっぱり怪しい話ってあるんだと思うんですよ。S子さんはそう言って話し出した。
ある時姉の夫から、お姉さんに人形を手放すよう説得して欲しいと頼まれたのが事の発端だ。S子さんは当時三十半ば姉は四十手前ほどの時のことである。
姉は子供が出来ず大そう苦労した。やっと妊娠となっても結局流産してしまい、子供がいるS子さんをそれは羨ましがった。
子供はもう無理そうかなと姉や周りの人間が思い始める頃、姉は一体の人形に傾倒していったそうだ。赤ちゃんを模した満面の笑みを浮かべる人形だった。
姉はその人形にチーちゃんと名付け可愛がった。食べ物やお菓子、ジュースなんかを供えたり、赤ん坊を抱くようにしてあやしたという。
様子がおかしいと思い始めたのは、姉が夫にこんなことを言い出し始めたからだ。チーちゃんが嫉妬して噛みついてくると姉が言い出したのだ。
話によると人形が姉を独占しようとして、夫に嫉妬していると言うのだ。そうして手に噛みついてくると言って腕を見せると、腕に沢山歯型が出来ているのである。
この歯型、医師の診察で姉が自分でつけたものだと判明している。最初は精神的におかしくなったかと疑ったが、どうもその人形が怪しいと皆思ったそうである。
とりあえず人形を供養しようじゃないかと姉を説得し、一度は了解も得た。いざ人形を寺に預けると、供養される前に人形が消えた。姉は人形が自分で帰ってきたと言っていた。
これもなんてことは無い、寺の防犯カメラに人形を持ち去る姉の姿が写っていた。どうも魅入られていらっしゃるようですね。と住職は言う。
再度人形を寺に預け、姉は夫が見張って、寺に行けないようにした。姉は涙を流して悲しんだが、人形は無事供養された。
供養が終わったあと住職が、しきりにあの人形はどこで手に入れたものですかとしつこく聞いてきた。どうも本人がフリーマーケットで買ったものらしく、どういう経緯で造られたものなのかはわからないと答えた。
「あの人形、背中に人骨が入ってましてね」と言った住職の言葉にS子さん一同は背筋が冷えたそうである。
人形が供養されてから、姉は何事もなかったかのように奇行を止め、おかしなところは一つもないと言う。
やっぱりそうですよね。本当に精神が病んでいたなら、治療しないと治らないはずですよね。あれってどうもあの人形のせいなんじゃないかって今でも思うんです。とS子さんは言った。
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