第16話 封印されたビデオ

 実話怪談というよりは都市伝説に近い話になるだろうか?


 A美さんは居酒屋の女将さんだ。小さな店を経営している。そこへ足しげく通うT雄さんという民放の放送局に勤める男性がいた。


 二人は大の怪談好きで、ことあるごとに怖い話をし合っては盛り上がっていた。


 ある日T雄さんがヤバ過ぎて放送できなかった心霊ビデオが局にあるとA美さんに話した。それはぜひ見てみたいという事になり、T雄さんは局からそのビデオを持ち出した。


 ビデオはとある惨殺事件の舞台になった空き家にリポーターと霊能者で行き、現場を霊視するという趣旨のビデオだった。


 他の客がいなくなってから、二人はそのビデオを見てみた。


「ここが惨殺事件の舞台になった家です」リポーターが一階のリビングでカメラに向かってまくし立ててる横に、はっきりとこちらを恨みがましく見つめる女が写っている。リポーターも霊能者もカメラマンも誰も女に気が付いていない。


 二階に上がって霊能者が「この部屋の隅に女が立っています」などと、まことしやかに喋っているのを馬鹿にするように、青白い顔をした男の子がカメラ前に現れ、カメラのレンズを覗き込むように顔を突き出してくる。


「うわっこれ凄いね」A美さんが声を上げた。「この後リポーターが変死したり、カメラマンが事故に遭ったり、挙句霊能者も原因不明の高熱でぶっ倒れたりしてさ、これお蔵入りになったんだよ」


 凄いな、本当にこんなビデオがあるんだな、と二人は震えあがったそうである。


 その日の晩、A美さんは夢を見た。あの見覚えのあるリビングに自分が立っている。なんだろうと思って辺りを見回す。するとバギンッ! という物音がして、リビングに突然男が乱入してくると、手にした包丁でA美さんの腹部をめった刺しにした。


 痛いっ! 痛いっ! やめて。飛び起きるとベッドの上だった。刺された様な感触が生々しく残っていた。腹部を見ると腹に何か所もあざが出来ていた。


 後日T雄さんに会うと、どんな目にあったかは言わなかったが、彼もまた何らかの霊障にあったようだ。二人はお祓いを受けることにした。


 亡くなった家族に想いを馳せ真剣に心の中で詫びを入れると、それ以後は特におかしな目には遭わなくなったという。


 ただ……今でも時々あのリビングに一人でじっと立ち尽くす夢をみる。すると不思議とあの廃墟に行きたくなるが、それだけは絶対にやめようと思っているそうだ。

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