第11話 水子寺その二

 N県M寺にまつわる怪奇譚をもう一つ。これは僕の中学時代の後輩が体験した体験談である。


 ある夏の日の夜、男三人でバイクに乗ってM寺へ肝試しに行った。噂の地蔵を携帯のカメラに収めたり、まっくらな本堂で騒いだりしながら、M寺の周囲をぐるっと回って帰ってきた。特に何も起こらない。


「なんだ、大したことねえな」などと言いながら帰路に就いた。肝試しの後はメンバーのうち一人の部屋に集まり、酒を飲んでいた。


 すると、大した量は飲んでいないのにメンバーの一人が意識を失った。うう……うう……とうなされている。


 なんだなんだと思っていると、突然部屋のドアをノックされた。ドンドンッ! ドンドンッ! と強くドアを叩かれた。


 おかしい、今は自分たち三人以外この家には人はいない。黙っているとまたドアをノックされた。


 鍵なんかはかけてなかったので、親や兄弟だったならドアを開けるはずだ。しかし外にいる何者かは執拗にノックを続けた。


 残った二人は震えあがって身を寄せ合ったという。ドアのノックは延々続き、それがやっと止んだのはもう朝の光が差し込むようになってからであった。


 ノックが止むとうなされていた一人が目を覚ました。うなされていた後輩は昨夜からの記憶がなかったそうである。


 目を覚ましていた二人はもうM寺への肝試しは沢山だと思ったそうだが、意識を失っていた一人は妙にM寺に行きたがったという。


「行くなら一人で行ってこい」その後彼らがどうしたかまでは僕は知らない。

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