8
キツネが過去の存在になってから1週間、カラスはある決心をしていた。
「よし、いい天気だ、今日、お前の元を離れるよ。なあキツネ、俺はもっと賢くなるよ、お前が大好きな人間の世界を、もっと覗いてみるよ。」
バサッバサッバササササ
カラスは一人、青空に向かって自分の身を投げ出すように飛び上がった。目指す目的は、ごみ箱。腹ごしらえをしなくては、彼の旅は始まらない。
「俺の友は、井の中の蛙だった、自分を痛めつけた存在にあこがれるなんてな、まったく滑稽だよ。井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る。あいつの場合は、空の青なんかじゃなく、きっと美しいしかくだったんだろうな、ま、俺にはそれを語る資格もないか、ハハッ滑稽だな。」
カラスは独り言をつぶやきながら着地点を見定める
「おいなんだあいつ、うれしそうな眼をしやがって、こっち見んじゃねえよ」
カラスの眼下には、高校生らしき男が、何やら嬉しそうに空を見上げていた。
………とまあ、カラスとキツネの話はここまでです。どうでしたか、あのカラスは今頃北海道で元気に暮らしているのでしょうか、それとも、あなたのすぐ近くで、食料を得るために奔走しているかもしれません。1つみなさん、疑問が浮かんだでしょう。『なぜカラスとキツネはあんなに短い期間で仲良くなったのか』と。
それは残念ながら私にもわかりません。しかし、カラスの寿命は10~15年。キツネに至っては長くて10年と、とても私たちにとっては短いと感じる年数になっています。もしかしたら私たちよりも彼らの一分一秒は、濃密なものなのかもしれない。だからこそ、あそこまで仲が深まったのかもしれませんね。みなさんも、カラスのように後悔ばっかりするのはやめてくださいよ、この人生100年時代に。
視覚 菅原 こうへい @sugakou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。視覚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます