7しかく

 アスファルトからキツネの亡骸を引き上げ、カラスはキツネを埋葬した。そして、懺悔した。

「…あの時、なんで俺はすべてを言わなかったんだろな。俺は、お前をずっと見てたんだよ。あんな長話しなくても、ぜんぶ知ってんだよ。」

 カラスはキツネだったものに話しかける。

「俺は…お前のことを…ずっと見ていた…あしが動かなくなった時から…ずっと見ていた…お前はいつも一人で、そのぎこちない足で…たくましく生きてたよな」

…………静寂が小動物とカラスを包む

「お前が言ってたな…熊ってやつは…あれは紛れもない人間だよ…人間なんだよ…おまえを駆除しに来た…枝なんかじゃねえ…銃弾だよ…木が倒れたのは…人間が切り込みを入れたからなんだよ…」

 とっくに雨はやんでおり、空が少しづつ明るくなってきた。

「俺は…人間が嫌いだった…飯を食べるために一生懸命なのに…汚物扱いしたり…挙句の果てには石だって…投げてきた…そんな人間という存在に…お前はずっとあこがれを抱いていた…まったく盲目だよ…その地面からの目じゃ…死角だらけだもんな…」

 ブロロロロロロ 車がどんどん通り始めた。誰も赤くなった地面には気づかない。

「俺はお前を見るうちに、仲良くなりたいって思ったんだ。いろいろなことを教えたかった。一人ぼっちのおまえの、話し相手になりたかった。いや、俺が人間にひどいことされすぎてて、誰かとただ話したかっただけなのかもな、俺は嫌われもんだ。そして、初めての友であるお前を、失った。俺は、大バカ者だ。」

 カラスの目は黒い体に似つかず、水晶のようにキラキラと輝いていた。

「なあキツネ、しゃべれよ、喋らねえなら、おれ、泣いていいか?」

 カラスが飛び立ったのは、午前11時だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る