6四角②
カラスの脳内に、昨日の出来事が流れ込んできた。キツネが人間世界に行くという決心をしてから、カラスは一度立ち去った。しかし、あのあと何時間かして、再びカラスはネズミを捕まえて、キツネの元へ戻っていったのだ。キツネがまた腹をすかしているに違いない。また、食料を持ってこなくては。カラスは狂気じみた確信をもっていた。
「よおキツネ、邪魔するぜ」
「なんだよカラス、今日は2回も会うのか」
「もって言うなよ。それより、持って来たぞ、ごはん」
「お、やったね、ちょうど腹ペコだったんだよ」
食事中のキツネに、カラスが問いかける。
「…なあキツネ、俺が言うのもなんだが、なんでお前はいつも一人なんだ?」
「……捨てられたんだよ。」
「捨てられた?」
「ああ、捨てられた。群れにも、親にも」
「詳しく聞かせてくれないか、」
太陽は傾き、キツネが頬を赤らめるのと、夕焼けの色が混ざりあった。
「…恥ずかしい話になるがな。俺は、小さいころから冒険家だった。些細なことに興味を持ち、父さんや母さんに質問を繰り返していた。人間の存在や、美しい池の名前、ウサギの味もな、まあウサギは今まで食ったことねえけど。」
キツネは所々でご飯を食べながら話を続ける。
「それでよ、ある時思い切って人間が使う道路に向かったんだ。あの時は夏でカンカン照りだったよ。車のスピードが弾丸みたいで、俺は怖くてその場から逃げてしまったんだがな、やっぱりそのあとに残ったのは恐怖よりも興味だった。」
話は続く。
「まあそんなこんなである時、俺は夜中に家を飛び出して、人間のいる方へ向かったんだ。好奇心の塊であった当時の俺は、ずんずんと光のある方へ向かったよ。そんでその時、‟熊”に出会ったんだ。」
「…熊?」
「ああ、すんごいひょろくてな、なんかわけわかんない声を発するんだよ。俺は近づこうと思ったが、そのあとに爆音が鳴ったんだ。後はこの間話した通り。まったく情けない。」
「それで?」
「家に帰ったら母さんに、『貴方はもうキツネじゃありません。そんな足じゃ群れの足手まといです。一人で行きなさい。』て言われてよ。悲しかったけど怒りがこみあげてきて、そんで俺は一人で生きていくことにしたんだ。」
「災難だな…」
「だから同情はいらないって。カラスは?お前もいつも一人だろ。」
「俺か?俺なんか平平凡凡だよ、カラスってほら、元から一人だし、」
「ふーん。」
「ま、まあ、明日、ほんとに気を付けろよ、俺は近くにいるから。」
「いつからお前は俺の保護者になった。」
キツネの顔は夜に染まってしまって、もう、カラスも見えない存在になってしまった。そのあとの会話は、無かった。
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