仮想と現実の狭間に揺らぐ

砂糖かえで

DIVE_1 0%→1%

 始まりは一つのゲームだった。


 それは現実世界を捨てて仮想世界に生きるというコンセプトのオンラインゲームで、ヘッドマウントディスプレイ等を使用して仮想世界を疑似体験するものだった。


 発想としては特段変わったものではなく、似たようなゲームは各社からすでに発売されていた。


 しかし『DIVE』と呼ばれる大型の装置を同梱したことにより話題性が一気に高まった。


 『DIVE』は視覚や聴覚のみで仮想世界を疑似体験してきたこれまでとは全く異なり、全身で仮想世界を疑似体験できる夢のような装置だった。


 最初は胡散臭さや価格の高さで売れ行きは低調だったが、ユーザーの高い評価を受けて徐々に売り上げを伸ばしていき、様々なところで特集され始めてから一気に爆発した。


 勢いは止まる所を知らず、世界中で一大ムーブメントを巻き起こすこととなった。


 ゲーム内では初期ユーザーが荒れ果てた何もない世界をどんどん開拓していき、それに加わった大量の次期ユーザーが街を作り、社会を生みだした。


 そして社会を維持するための大事な秩序も生まれた頃。現実の企業がゲーム内の街に出店した。その時はゲーム内通貨とは別に現実の通貨を使って取引が行われた。


 先駆けてゲーム内に出店した企業は想像をはるかに超えて繁盛し、それを知った他の企業も蛇口を捻ったように次々と出店をした。


 やがてゲーム内通貨が消えて、現実の通貨が電子通貨として使えるようになった。そのおかげか、仮想世界にもかかわらず金銭を得るちゃんとした仕事が持てるようになった。


 ゲーム内仮想世界は人口を増やし発展し続け、第二の世界、第二の地球と言っても過言ではなくなった。


 そのゲームの名は『TRUE WORLD』。


 キャッチコピーは開発者自らが考えた『0%の世界にしがみつくのをやめて、1%の世界に行ってみませんか』というものだった。



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