10「三人文殊 -さんにんもんじゅー」

 物語の中で言う、『モブ』。その他大勢。背景のようなもので、人格はない。


「二人はどう思う? このまま背景として終わるか? いな、俺はモブから『人』になる!!」

「とは言っても、どうするんだい?」

「そうですよ。必要とされていないから『モブ』なのに」

「ぐっ……」

 指摘された内容に図星を刺され、口ごもる。


 男三人、集まって知恵を絞る。そんな話ができるのは、三人とも『異世界転生』をしているからだ。伯爵家の三男坊、子爵家次男、男爵家の跡取りという組み合わせ。


 貴族の子供が通う魔法学院に入学して早一年半。入学した頃から一緒にいる。

 そんな中、『モブ』が意識を持ったのは、伯爵家の三男坊がある人物と出会った瞬間に気絶するような頭痛に襲われてからだ。前世で縁があったのか、他の二人も同じ時期に前世の記憶を思い出した。


「……実は俺、この世界でやりたいことがあるんだ」

「「やりたいこと?」」

「そう。前世では悪役令嬢と言われていた、侯爵令嬢と結婚したいんだ!!」



三人文殊さんにんもんじゅ:平凡な人でも三人集まって考えれば、すばらしい知恵が出るものだというたとえ』


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