03「一言一句 -いちごんいっくー」

 世の中には『イケボ』が存在する。そう。イケメンボイスである。その声は、聞くだけで地上人を天上へと導く。


 イケメンの基準は人それぞれだと思う。だから、イケボの基準も人それぞれなのである。


 ゲームの電子音にだって、イケボは存在していた。

 ほぼ全てのキャラクターが高音もしくは大差ない中で、明らかな低音の電子音が耳に響く。革ジャンを着てちょっとロックな感じで、低音が合っている。


 かわいい顔したイケボ。渋めの顔した高音。

 見た目とのギャップなんて関係ない。目を閉じればイケボに浸れる。


 ――そんな信条の女子が約一名。日に一度聞けるか否かしか発言しないクラスメイトの前で、待機していた。

 体の芯に響くような、心を震わすような、どっしりとした声を求めて。


「……あいなめ」


 それは魚か別の何かか。意味不明でも声を聞けただけで幸せになれる。それが、イケボ。



一言一句いちごんいっく:ほんのわずかなことば』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る