118:選ばれし者たち




 俺の知っている生徒会は、俺を含めて6人体制のはずだった。

 しかし、用意された椅子は7つある。

 誰か1人増えるのか、それとも全員違うのか。


 予期せぬ事態に俺は混乱して、全く進行を気にしていられなかった。


『……それでは皆様お待ちかねかと思いますので、ランキングの発表をしたいと思います。ランキングは画面に出てきますので、そちらをご覧下さい』


 その言葉を言ってすぐに、上から大きなスクリーンがおりてくる。

 さすが寄付金たくさんのお金持ち学校のおかげで、全校生徒が画面を見られるぐらい大きい。


 そこにランキングが出るのか。

 これを集計して発表する先生は、一体どんな気持ちなのだろう。

 抱きたい、抱かれたい、そんな直接的な言葉を使っているのにPTAとかが出てこないのは、権力でもみ消しているからだろうか。


『それではまず、抱きたいランキングから発表いたします!』


 期待して待つ生徒の視線が、スクリーンに集中する。

 俺もその中の一人で、緊張しながら、それでも目をそらさずに見る。


 スクリーンの画面が切り替わり、抱きたいランキングという文字が現れた。





 第1回 抱きたいランキング

 1位 一ノ宮 帝

 2位 皇子山 美羽

 3位 七々扇 五十鈴

 4位 姫野 かな

 5位 西園寺 夕陽

 6位 西園寺 朝陽

 7位 伊佐木 圭

 8位 龍造寺 宗人

 9位 雅楽代 雅

 10位 仁王頭 倭





 とりあえず、10位までを出すようだ。

 名前が出た瞬間、歓声が沸き起こる。

 知っている人の名前が出たことに安堵を覚えつつ、1位に俺の名前があることに疑問を感じた。


 俺が抱きたいランキング1位?

 何かの間違いじゃないか。

 そう思うが、周りが何も言わないということは、間違っている可能性が低いということだろう。


 俺みたいなのを抱きたいと思う人がいるという事実に、目をそらしながら次のランキングの発表を待つ。



『続きまして、抱かれたいランキングを発表いたします』


 また画面が切り替り、今度は抱かれたいランキングという文字が出た。





 抱かれたいランキング

 1位 一ノ宮 帝

 2位 仁王頭 倭

 3位 四斗辺 環

 4位 皇子山 美羽

 5位 龍造寺 宗人

 6位 伊佐木 圭

 7位 雅楽代 雅

 8位 西園寺 朝陽

 9位 西園寺 夕陽

 10位 七々扇 五十鈴





 こちらのランキングは、そこまで驚きは少ない。


 仁王頭が2位にまで上に来たのは、ここ1年で他の生徒とも交流を持つようになったおかげだろう。

 四斗辺さんは、風紀委員長を辞めると言った今でも、とても人気があるので3位は納得の結果だ。



 ほとんどメンバーは同じで、順位だけ入れ替わっている状態だが、それだけ俺達の人気は高い。

 そのおかげもあり、生徒会役員に選ばれるのだから、同じ名前が連なっても仕方が無いだろう。


「……そういえば……仁王頭、どちらのランキングにも入っているんだな」


 仁王頭は風紀委員に入るわけではないし、親衛隊にも入っていない。

 でも、物語では生徒会役員になっていないのだから辞退するのか。



『ランキングは確認出来たでしょうか。11位からのものは、後で閲覧が可能なように手配しておきます。続きまして、生徒会役員任命式に移ります。名前を呼ばれた生徒は壇上にあがり、上手から順に着席してください』


 いよいよだ。

 これは物語の中でも、重要な場面になる。

 俺は拳を握りしめ、その瞬間を待つ。






『生徒会会長……一ノ宮帝』



「……はい」



 名前を呼ばれ、俺は一呼吸置いてから返事をした。

 間を開けたのは、生徒会長になって当然だと思っていたのを見せつけるためで、あくまでも余裕な態度をとっていた。


 俺の名前が呼ばれた途端、黄色い悲鳴と何故か野太い歓声が上がる。

 俺はそれに手をあげて応えると、堂々とした態度で壇上へと進む。


 その途中、知っている顔と目が合い、とりあえずニヒルに笑っておけば、さらに声がうるさくなった。

 呆れた顔をされるが、俺は悪くない。



 たくさんの生徒の視線を受けながら、俺は階段を上る椅子に座った。

 全校生徒を見渡す機会なんて、そうそうない。

 俺はたくさんの視線にさらされながらも、緊張することなく、次を待った。



『続きまして、生徒会副会長……皇子山美羽』


「はい」



 美羽も予想をしていたのか、涼しい声で返事をし、そのまま優雅な足取りでこっちに来る。


「……おめでとう」


「あなたの隣は、絶対に譲りませんから。当然です」


 隣に座った美羽は当然だと言いつつも、嬉しさを隠しきれていなかった。

 なんだかんだ素直じゃない。



『生徒会書記……龍造寺宗人』


「……はい」



 その名前が呼ばれ、俺はひとまず安心した。

 龍造寺はこの学園に来たばかりである。

 だから、生徒会役員は荷が重いと思われたらどうしようかと心配していた。


「帝、帝」


「ああ、よくやった」


「ふふふ」


 嬉しそうな顔をしているから褒めたら、さらにぽやぽやとした顔で席に座った。



『生徒会会計……伊佐木圭』


「はい!」



 ゆるい笑みを浮かべて立ち上がった圭は、声を上げる生徒に、ひらひらと手を振る。

 ここ最近、少しチャラい部分が出てきた。

 さすがにただれたことはしていないだろうけど、要注意だ。



「これからよろしく」


「よろしくな」



 せフレとかの話を聞いたら、俺はどうなるか分からない。



『続きまして生徒会庶務ですが……異例ではありますが、今回は2人おります……西園寺朝陽、西園寺夕陽』


「はあい」


「はーい」



 勢いよく飛び跳ねて立った2人は、スキップをしながらこちらに来た。


「……ちゃんとやれよ」


「失礼だなー」


「分かっているよー」


 頬を膨らませているが、愉快犯だから油断は禁物だ。



 これで、俺の知っている生徒会役員は揃ったはずなのだが。

 俺はまだ誰も座っていない席に、視線を向けた。

 そこには、誰かが来るのだろうか。



 視界の声に、俺は耳をそば立てた。



『最後に。こちらも異例なのですが、生徒会補佐を任命いたします。名前を呼ばれた生徒は、壇上に上がってください』



 補佐、そんなものは無かったはずなのに。

 誰が任命されるのだろう。


 生徒達とは違った意味で待ち構える中、その名前が呼ばれた。




『……仁王頭倭!』





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