116:これでやっと大体のキャラが揃いました




 2年生なり、クラス替えが行われた。

 そして俺や美羽達は、みんな同じクラスになった。


 1年生の時に別々にしたせいで、色々と不満がたまっていて、1年間なだめるのに苦労したからだ。

 もうあれは経験したくない。

 そう思って、俺は神楽坂さんに頼んでクラスを同じにしてもらった。


 完全に俺のわがままだったけど、美羽達の様子は伝わっていたようで、予想以上に簡単に受け入れてくれた。

 そういう経緯もあり、全員がいるクラス。



 その中に今日、新たな仲間が入ってくる。




 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「えーっと、編入してきた龍造寺宗人だ。みんな、仲間はずれとかいじめとかくだらないことをしないで、仲良くしろよ。もし何かしでかしたら、どうなるかはもう分かっているよな」


 いつものように面倒くさそうな桐生院先生の紹介を受けて、宗人君が教室に入ってきた。


 俺は知っていたから驚かなかったけど、容姿を整えた宗人君は和風のイケメンなので、にわかに色めきだった。

 それは俺にとって好都合である。


 これから行われる生徒会を決めるランキングで、宗人君を上位にくい込ませるためには、インパクトが大事だ。

 転入のことは何も言わなかったけど、これからサポートをしていくつもりである。



 このままいけば、俺を含め物語通りに生徒会役員になることが出来るだろう。

 そのあとが大変だけど、まずは第一関門を突破しなければ何も始まらない。


 ギリギリ宗人君を連れてくることが出来て、本当に良かった。

 存在を忘れていたことは、絶対に言わないようにしておこう。

 またメンヘラな部分が出てきたら、上手く止められる自信が無い。


 教室に入ってきた宗人君は、教卓まで歩くと、中を見渡した。

 そして視線がばっちり合ったので、俺は笑みを浮かべて手を振っておく。


 その様子を見たクラスメイトがざわめき、そして俺の周囲を囲むように座っていた美羽達の目が見開かれた。


「……まさか」


 美羽のその言葉の続きを、聞くことは出来なかった。

 言葉を遮るように、宗人君が自己紹介を始めたせいだ。


「龍造寺宗人です。わけあって転入してきました。そのわけというのが、俺の天使である帝が導いてくれていたおかげで。俺と帝は運命共同体なんだと思います。それに俺のためにわざわざ説得しに来てくれたのだから、これはもう結婚したも同じで……」


「ちょっと待った!」


 まさかこんなにも早く、メンヘラを発動するとは予想外だった。

 そのせいで止めるのが遅れてしまい、完全に宗人君の性格はバレてしまっただろう。


 龍造寺さんが性格を直しておくと言っていたから、完全に油断していた。


 俺に向かって楽しそうに手を振ってくるが、それに返すことは出来なかった。


「あー、そういうえば、龍造寺は帝が編入を手伝ったらしいな。それじゃあ近い席がいいか。伊佐木、席を代わってやれ」


「え。俺ですか? 嫌ですけど」


「嫌なのが駄目だ。こんなんだけど龍造寺は来たばかりなんだから、知り合いがいた方が安心出来るだろう。慣れるまででもいいから、な?」


「えー」


 俺の席を中心とすると、前に仁王頭、左隣に美羽、斜め左後ろに朝陽、後ろに匠、斜め右後ろに夕陽、そして右隣に圭がいた。

 この席順になるまでも、壮絶な争いがあったから、圭からしたら不満いっぱいなのだろう。


「……分かった。慣れるまでの間だけね。慣れたと思ったら、すぐに変えてもらうから!」


 頬を膨らませるが、桐生院先生も引かないので、結局は渋々了承した。


「助かる。それじゃあ伊佐木は一つ前の席に移動して、龍造寺は帝の右隣に座る。それでいいな?」


「はーい」


「はい!」


 宗人君のメンヘラ具合には触れず、淡々と席の移動を決めると、あとは勝手にしろとばかりに手を振った。

 相変わらずだけど、それでも俺はこれが桐生院先生の優しさだと知っている。


 下手に突っ込めば、さらに宗人君はおかしなことを口にする可能性が高い。

 それを未然に防ぎ、知り合いである俺にどうにかするように任せてくれたのだろう。


 それなら期待に応えるしかないと、俺は近づいてくる宗人君に俺様の笑みを向けた。


「よく来たな。でも俺の邪魔をするなよ。いい子にしていれば、ご褒美ぐらいはやるかもな」


 この学校に来る前に、すでに俺様をしていることは説明済みである。

 本当は最初からやるべきだったのだろうけど、神楽坂さんや龍造寺さんといった、目上の人に俺様をしづらくてこんな形となってしまった。


 バラす可能性はゼロに近いので、なんとかなるだろう。



 そういうわけで、俺様演技を初めて見た宗人君は、俺の顔を凝視して固まった。


「やばい。強気な帝も可愛すぎる。小悪魔なのかな。天使から地上におりてきた時に堕天した? それじゃあ白い翼じゃなくて、もしかして黒い翼が生えているのかな? 何それ、普通に見たい」


 本来だったら寡黙な武士のような性格だったはずなのに、これが本性だとでもいうのか。


 やはりほとんど何を言っているのか分からず、俺も口角を上げたまま固まってしまった。



 これからの学園生活が、本当に不安すぎるが、とりあえずは主要キャラがそろったことを喜んでおこう。

 そうポジティブに考えるようにした。




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