16「夏のある日、霊魂占術師が森の中で」

 半透明の兎が、霊魂占術師ネクロマンサーを木の実の元へ連れていく。青年は儚げな笑みを浮かべ、案内役の兎の頭を撫でる。

「お前も、肉食えよなー」

「森の友達を食べるなんてできないよ」

 困ったように眉を下げる青年は、自分の顔と瓜二つの浮遊する人物に反論した。

「世の中は弱肉強食。そんな弱っちいことを言ってるから、いつまでもガリガリなんじゃねーか」

「それはそうだけど……」

 青年は、目の前で腕を組んで浮かぶ双子の兄を見る。逞しかった兄は熊から弟を庇い、その時の怪我が原因で命を落とした。

 霊魂占術師ネクロマンサーは吉凶を占うことを生業なりわいにしている。しかしその時だけは、禁術を使って兄の魂を兄弟の家に定着させた。

「お前がもっと頑丈になってくれねーと……」

 言葉を途切れさせた兄は、瞬時に黒紫の炎を身にまとって迎撃体勢になる。

 兄の視線を追う。すると半透明のひらひらした何かが、木の間を器用に通り抜けてこちらに近づいてきていた。


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三間 いとう縁凛 @15daifuku963

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