15「月曜日、女子大生が街中で」

「今日から、大学生なんだ。応援しててね」

 写真の中で笑う母に手を合わせた日向薫子ひなたかおるこは、時間に余裕をもって家を出る。生前に買ってもらった、スーツ一式。晴れ姿は見せられないから、自撮りで今日の思い出を残す。


 木造アパートの階段を降りると、管理人がほうきで掃除していた。ぺこりとお辞儀をして、道に出る。

 春の日差しを受けて進んでいると、きらりと何かが反射した。近づき、百円玉だとわかる。地図アプリで検索して、近くの交番に向かう。


「すみません、誰かいませんか?」

 声を掛けたが、何も反応がない。通りから少し外れた場所にあるし、まだ始業時間ではないのだろう。そう思い、薫子はメモ用紙に名前と連絡先を書き、百円玉を置く。

「道で拾いました。何かありましたら連絡下さいっと。こんな感じでいいかな」

 書置きを残して振り返ると、目の前に石畳の道と大きな館があった。慌てて後ろを確認しても、交番はない。立派な門と、手入れの行き届いた花壇があるだけだった。


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