14「任務遂行0日目、査問騎士が酒場で」

 首都から少し離れた街、サーレス。元々オアシスだったこの街は開拓された。その、中心部。いくつかの酒場カッマーラや商店が並ぶ中、帯剣した一人の男が一番大きな酒場に入った。


 樽に板を載せた机、樽板机マクタブ果実酒アラックあおっている客を横目に、店内の掲示板の前へ行く。酒場特有のにぎやかな雰囲気の中、男が捜すのは上司からの指示書。


(……鎖に巻きつかれたハート、ですか。少々骨が折れそうですね)


 掲示板には、様々な発注書が張り出されている。王族や商人、一般の人からも不特定多数に仕事の依頼ができる仕組みだ。発注書の様式は依頼内容が明確なら、他は何でもあり。装飾をしてもいいし、派手な色のインクで書いてもいい。


 男が捜していたのは、そんな発注書に紛れ込ませた上司――第二王子からの指示書である。内容は店の手伝いやせ物捜しなど報酬が低いもの。重要なのは、発注書の四隅全てに描かれた絵柄だ。事件や調査する内容と、どの派閥に属する人間のことなのかを示している。


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