11「ルーシュ」

 宙に浮かぶ、逆円錐形の大きな島がある。円錐の底――島の上部は真っ平。生える木々は、止まない強風の影響で斜めになってしまっている。


 人々の姿を捜せば、逆円錐形の底面の中央に大きな穴が開いていた。その穴の中に、階段状に街が広がっている。岩盤をり貫いたような素朴な建造物が並ぶ街は、穴を境に四方へ続いていた。上の方にある建物は、細やかな装飾がされているようだ。


 下方と上方を結ぶのは、東西南北に設置された風傘ヴィンシル。下がる際は半円状のほろを上向きに、上がる際はその逆の動作で人を運ぶ。風の量や強さで止まる階層を調整する。風の魔導師ならば、風の調節は朝飯前だ。

 基本的には自由でありたい――様々な物事に束縛されたくない、風の都人の性格がよく出ている乗り物だろう。

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