10「ヴァーシュ」

 大きな大きな、宙に浮く島。ここには平がほぼ見えない。平らな土地には全て建造物があり、道であるはずの部分には水が流れている。水路だ。


 そう。ここは水の都。

 都の中央部には螺旋階段らせんかいだんで登る、展望台も兼ねた石造りの神殿がある。その周囲もまた水に囲まれ、四方に流れゆく水は、滝となって下へ進む。滝壺から四方の端まで、何度か蛇行して島の端からまた下へ流れゆく。


 大通りならぬ、大水路。その水路に沿うように家々が建てられていた。大水路沿いは商店が多く、建物の大きさにはゆとりがある。しかし支流へ進むと、ごちゃっとした印象になる。

 家々の間隔は狭く、人っ子一人通れない。水路をまたぐように石橋がかけられていたり、紐で吊るされた洗濯物があったりする。交差点らしき部分には噴水のように水柱が上がっていた。


 それでもどこか統一感があると思えるのは、建物の造りが統一されているからだろう。クリーム色の壁とオレンジ色の屋根は、遠くから見れば壮観だ。


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