07「河芦 ーかろー」

 少し雪が残る山と山の間に、ゆらりと煙が上がっている。その煙は柔らかく、いくつも立ち上り、煙突の下には同じ造りの建物が並ぶ。


 陶器を売る店、漬物を売る店、饅頭まんじゅうや温泉たまごを売る店。

 土産みやげ屋と並ぶのは温泉。血行促進、美肌、腰痛緩和等々、くらのような建物の前に効能が書かれた看板があった。


 温泉街を抜けると、ひらけた場所に出る。そこでは朝市が開催されていた。採れたての新鮮野菜、作り立ての炊き込みご飯、手作りの手芸作品。

 アクリルたわしも売っている。濡らすだけで汚れを落とすそれは、アクリル毛糸製だ。昨今、百均にだって毛糸が売っている。だから自分で作った方が安上がりだけど、編むのは大変だ。それに目の前にあるアクリルたわしは、配色や形にもこだわっているものが多い。一つ、りんご型のアクリルたわしを買った。


 助手席に乗り込み、窓を開ける。一泊しただけではまだ慣れない、硫黄いおうのにおいがした。


 ちらつく雪を見ながら入った昨夜の温泉を思い出しながら、河芦かろから家路に着く。

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