06「ルカル地区」

 北の空。そこには一年中、昼夜を問わずに輝く赤い星がある。それは世の中の乱れを見抜き、輝きが陰る時は多くの人の命が消えると言われている。


 人々は空を見上げ、守護星ルカルが陰らないよう毎日祈りを捧げていた。



 闘技場や神殿がある地区を抜けると、平坦な土の道が続く。人々の熱気からは遠く、穏やかで静かな風が吹いている。


 そこへ、カラカラと音が響いてきた。国の紋章である『ペンタス』が飾られた馬車が野道を走ってくる。

 紋章の花の赤さや葉の緑を際立たせるかのように、馬車に施された装飾は色味が抑えられている。しかし銀鼠ぎんねず金鼠きんねずには銀粉や金粉が混ぜられており、馬車内の人物が高貴な身分の者とわかる。


 馬車が向かうのは、ルカル地区。国の中で唯一、「ルカル」の名が与えられた場所である。そこにあるのは、国立の孤児院。戦乱の世に親を亡くした子供が何人も暮らしている。

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