05「深空 -みそら」

 深空みそら駅の5C口から出る。 目の前には、行き交う人々とコンビニ。鼻に届くのは、甘辛そうなイカ焼きの香り。お客を呼ぶ車夫の声がいくつも聞こえてくる。


 そう。ここは活気溢れる深空の街。


 いくつもの商店街が連なって軒を並べている。

 喫茶店、雑貨屋、美術館にも見える個人の邸宅。

 ファーストフード、ベーカリー、ワインバー。

 様々な店が雑多に並ぶ。


 賑わう表通りから一本路地に入ると、急に人がいなくなる。

 昔ながらの建造物。花台かだいから吊り下がる干し柿。何か言いたそうなたぬきの置物。ぎゅっと詰まった家々の間で毛繕いする猫。


 そんな裏路地を抜けると、魚、青果、惣菜等生活に密着した店舗が並ぶ。

 イカ焼きの香りをいだ時からずっと、空腹で腹の虫が鳴いていた。惣菜屋でハムカツ、八百屋でバナナ、魚屋でまぐろの刺身を買って帰る。


 食べ合わせは問題ではない。今何が食べたいのかが重要。食べたいものこそ、体が求めているのだから。

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