04「ヴィンデ」

 王都ヴィンデは、五つの都に支えられている。


 木材を利用する森の都。炎を駆使する火の都。鉱石を応用する石の都。貨幣を流通させる金の都。水を慣用している水の都。


 王都は五つの都の中央部にあり、その周囲を堀が囲む。

 五つの都の境には、大きな水路がある。水路を使えば利便性が高い。しかしながら通行料も高い。だから人々は各都から王都を繋ぐ橋を渡って移動する。


 ――何の力もない、庶民ならではの方法だ。


 五つの都には、それぞれ『魔女』と呼ばれる者が存在する。

 木材も炎も鉱石も水も、魔女達は容易たやすく扱える。空を舞うすべさえも、金を生み出し難なくこなす。


 徒人ただびとと魔女の違いは、特別な力を使えるか否か。


 金の都に、金を生み出さない魔女がいた。

 王都と同列の煌々きらきらしい街並も、人付き合いにも興味を示さない。

 彼女が心惹かれるのは、配色のみ。色の組み合わせだけで様々なものを作り出す。


 そんな彼女は、確かに魔女である。しかし少しだけ、他の魔女とは違うようだ。

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