15「努力家」

 暗い。それが、この部屋の印象だ。


 明り取り程度の小さな窓は北側にあり、ほとんど日差しも入らない。深緑なのか藍色なのか、ほぼ黒に見えるカーテンも、暗いと思った一因だろう。開けられていても、全ての光を吸収しているように感じられる。


 壁は白いが装飾はなく、パイプベッドと使い古した学習机も、この部屋の印象を悪くしていると思う。


 壁に掲示されたものには温度差があった。ハードケースを使った簡易的な額縁に入れられた、いくつもの賞状。女子用のテニスウェアを着て、トロフィーを持っている写真。一見すると華やかな成績のようだが、写真の中央に立つ少女の笑顔はぎこちない。すぐ隣にいる、少女と顔がよく似ている妹の方が、屈託のない笑みを浮かべている。


 棚の中身は全て参考書。漫画や趣味の本などは見当たらない。ベッドの正面には、『オンリーワンよりナンバーワン』と書かれた貼り紙があった。



 ――ここはきっと、【努力家のお姉ちゃん】の部屋。


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