14「宰相」

 壁の一面が大きな窓になっている部屋だ。射し込む日の光は、程よく暖かい。光は部屋の奥まで届き、室内を照らす。


 窓の前には、大きな執務机。書類の山がいくつか置かれている。机上には、三つの書付かきつけがあった。

『王の行きそうな場所』、『王が好きそうなもの』、『王を発見した場所』とある。三つ目の内容以外は、この部屋の人物がいかに王を尊敬しているのかがわかり微笑ましい。


 仕事をする公的空間と寝台のある私的空間を分けるのは、壁にある柱。二つある柱にはそれぞれ腕木うでぎが設置され、国鳥の黒鷲くろわし……いや、黒鷲の編みぐるみが置かれていた。


 その他にも、寝台の周囲には栗鼠りすうさぎ、羊、狐、小鹿、瓜坊等々小~中型の編みぐるみがある。一見すると非常にかわいらしい寝台周りだが……。


 机に置かれていた、三つの書付。

『王の行きそうな場所』は『王の逃亡先』、『王を発見した場所』は『王を捕獲した場所』ではないだろうか。

 少なくない書類の山が、思わず涙を誘う。



 ――この部屋はきっと、【苦労人宰相】の部屋。

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