第18話 D・Ghost、ブラック企業やめるってよ。
<問・退職を決意!>
・ちょっと体調が良くなってきた(気がしたので)退職を決意!
退職を決意したのは入社した翌年の八月ごろの事でした。仲の良い友達に
「転職したい!」と相談したところ、
「んー、じゃあ、職安紹介するわ」
と言って連れて行ってもらった場所が【ジョブカフェ】という職業安定所でした。
とまぁ、簡単に書いていますが、実際のところ残業や休日出勤のせいでなかなか職安にも行けなかったんですけどね。社内ニートやってるはずなのに!
なので上司には
「その日は精神病院に行かないといけない日なんで休みます……
と言って仮病? と使ってジョブカフェに向かいました。
さて、ちょっとジョブカフェの宣伝みたいになってしまいますが、少しばかり説明をば。
ジョブカフェは若年層向け(~三十五歳まで)の職業安定所で、一人一人にカウンセラーが付き、毎回しっかり相談に乗って頂きながら就職先を見つけられる、なかなかに興味深いサービスを提供してくれる機関です。
カウンセラーは心理カウンセラーや中小企業カウンセラーなどの有資格者ですから、専門性も高いですし、単純な相談から、心理テストを用いて仕事の向き不向きを探したりと結構親身になってくれます。
また、僕がお世話になったジョブカフェはアフターフォローもしっかりしていて、月に一回、ジョブカフェを利用して転職した人々が集まって勉強会と称した交流会も行われていました。皆さん一度は就職で痛い目にあった方々だった為か、気遣いの出来る優しい人ばかりでした。
と言うわけで友人の紹介もあって僕を担当してくれるカウンセラーさんも決まり、今働いているA社の状況を説明します。
ボク「……と言うわけで、こんなことがあったんですよー」
カウンセラー「うっわー。今までいろんな人から話聞いてきたけど、アンタの話は断トツで引くわー」
カウンセラーさんにドン引きされつつ転職活動がスタート。
まだ若かったこともあって即面接、即合格で次の職場はすぐに決まり、十月一日から無事に転職することが決まりました。今思うと、若さってすげぇな……。
・辞表提出!
辞表を書く際、封筒に何と書くでしょうか?
「退職願」? 「退職届」?
この二つには違いがあります。
〇「退職願」
仕事辞めたいんです! ってお願いしている書類なので会社側は断る権利があります。
〇「退職届」
仕事辞めるから! と確定事項をお知らせする書類なので会社側は断れません。ビリビリ破るなんて言語道断。そんな事やられた日にゃ、労基に走りましょう(笑)
実は法律上、口頭で辞めると申し出ればOKだったりもします。最近は退職代行業なんてのも流行っているんで、これらの知識はあんまり必要のないものになっていくのだと思います。
辞表提出後、引き留められたり、脅されたりなどはせず、比較的すんなり辞めることができました。僕の場合は病気もあったので口出しすることが
ただし、辞表提出してからあからさまな嫌がらせを受けている社員も居ましたので、僕た特例だったかも。
さて九月上旬には転職が確定していたのにすぐに転職しなかった理由……それは決算! そしてボーナス!
どうせなら少しでも金を貰ってからやめてやろう、と言う魂胆です……が、以前も書きましたが最後に貰ったボーナスも数万円程度。
うん、ダメだな、この会社。
《解・よっしゃ、辞めるぞ! いやっほぉぉぉぉうい!!》
・僕と同じタイミングで退職する人たち
〇生産管理部のHさん
偶然にも同じタイミングでHさんも会社を辞める事となりました。
Hさん「仕事辞めた後どうするの?」
ボク「一応、次はもう決まってて、そこが3DCAD(三次元的に図面を描ける設計ソフト。当時、教えてくれる学校はなかったはず。トヨタが導入して話題に。あとガンプラもこれで作ってる!)を導入するらしいんで、ちょっと仕事がてら勉強してくるつもりです」
H「お、いいねぇ」
ボク「Hさんはどうするんです?」
H「ああ、デート喫茶を作るよ」
ボク「……デート喫茶ぁ?」
困ったときのグーグル先生! ポチポチっと検索……
要約すると風俗店じゃないか!?
そもそも何でこの人がモノづくり系の企業に入社したのかわからない。Hさん自身は否定していたけれど、一部では暴力団関係から来ていてA社に圧力をかけるために侵入したスパイ疑惑があったのですが……。
まぁ、どちらにしろ、僕にとっては悪い人ではなかったですけれど。
〇生産管理部部長
前回のエピソードでも触れた、いぶし銀の渋いオッサン。彼は今年で定年退職。決算のタイミングでA社を退職することになりました。お疲れさまでした。
中途採用で部長の後を継ぐ、新・部長が九月に入社したのですが、生産管理部の雰囲気はどんよりとしていました。
「部長についていく!」
と言っていた方々はもはや涙目。この年内中に後を追うように退職した人が沢山いたとか……。
そして中途採用された新・部長。
僕はすぐに辞めてしまったので詳しくは知りませんが、中々のタヌキオヤジだったようです。
・ドタバタ! 決算会議が始まるよ❤
決算会議は社員全員が出席する会議なので会社近くの会議室を借りて行われました。内容は今期の売上が発表されるくらいで毎朝行われる朝礼と大差なく、問題点に対して精神論を掲げるだけの中身のない会議でした。
そんな眠気を誘う会議の中、さっそうと現れたのがA社に入って間もない生産管理部の新・部長! 部門の部長と負う事もあって全員の前に出て挨拶と来季に向けた抱負を語り始めました。
新・部長「……えー、では来季はこのような目標に向かって進んでいきたいと……」
社長「うむ! 新・部長。君の責任の上でしっかり頼むよ」
新・部長「ええ、社長や専務、他取締役の方々の協力の上で目標に対し……」
社長「いや、君の責任で頼むよ」
新・部長「ええ、ですので社長や専務、他取締役の方々の協力をして頂いて……」
社長「いや、そうじゃなくて君の責任でだね」
新・部長「ええ、もちろん社長や専務、他取締役の方々の協力で……」
いきなり、こんなやり取りを始めるので社内騒然。
つまりです。
社長も新・部長も責任なんて取りたくないのです。なのに管理職についている。こいつらはバカ(笑)だから自分の事しか考えていないでしょうけれど、この光景を目の当たりにした社員たちはA社の不安定な責任の所在について疑問に思い、不信感を膨らませることになりました。
・退職した日。D・Ghost、A社辞めるってよ。オメデトー!
さて、決算会議の後、ついに僕はA社から解放されます。けれどその前に最後の関門が立ちふさがっていました。それは……
《同僚、先輩方、上司への挨拶回り》
正直、クソ面倒くさい。
同期や後輩、世話になった数人の上司ならともかく。けれど全員に挨拶するのがA社の暗黙の了解。まぁ、これで最後のわけですし、我慢して口うるさかった人や、臭い人や、よく知らない人のところまで行って
「お世話になりました」
と心のこもらない声をこぼしてまいりました。そしてフラフラと辿り着いたのが愛人のデスク。致し方ない。こいつにも挨拶してくか。
ボク「愛人さん。お疲れさまでした」
愛人「ハイ、オツカレサマデス」(一切目を合わせず)
ボク「今日でA社辞めるので、お世話になりました」
愛人「アー、ハイ、ソウデスカ」(一切目を合わせず)
良い年こいて社交辞令に社交辞令を返せないガキみたいな人です。
この時から少しの間、(女の人って怖いなぁ……)なんて思ったりもしましたが、いろんな人と会ううちに、女性が怖いんじゃなくて、この愛人の頭がちょっとおかしいだけなのだと気づけたのは幸運だったと思います。
拗らせた人間の不気味さに男も女もありません。
その後、挨拶回りもやる気がなくなり、社長への挨拶は無視して帰る事にしました。最後の最後に、あのキモチワルイ臭いを嗅ぎたくなかったし。
あ、禿上司への挨拶はフツーに忘れてた! ま、いっか!(笑)
・そして僕の前には自由が開けた。うひょぉぉぉぉ!(かのように思えた)
挨拶を終え(正確に言えば挨拶をやめて)A社の外に出ると同じく退職するHさんが待っていました。
Hさん「乗ってく? 家まで送るよ」
ボク「ありがとうございます! お願いします!」
Hさんの車がA社の駐車場を抜け、中小企業が密集した工業団地を走っていきます。僕もHさんも得も知れぬ開放感から胸の奥がワクワクしていました。
なんか、もう、叫びたいくらい。
ボク「Hさん。叫んでいいですか。めっちゃ、シャウトしたい!」
Hさん「おう、叫べ。叫べ」
ボク(窓を全開にしてから)「自由だぁぁぁぁぁ! うひょぉぉぉぉ!」
空は夕焼け模様。陸橋の上で輝く夕日に向かって、赤とんぼが飛んで行ったのを覚えています。
……さて、こんな風に書いていると、まるで青春映画の終盤のようですが、僕のブラック人生はまだ始まったばかり。(ノ∀`)アチャー
次回、最終話。
ブラック企業よ永遠に……滅びよ!
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