番外編 悪い人たちだけじゃなかったのよ『めっちゃいい人エピソード~INブラック企業』

 今回は殺伐としたブラック企業A社の中にも優しい人がいた!? と言うお話です。

 キワモノオヤジだけではなく、ダンディなオヤジ達についても書きたいのです!




〇めっちゃ良い人ばかりだった同期達


 同期達については以前も書いた通り。

 Aさん、Bさんはちょっとパワハラ化してしまいましたが、それでも社会一般で見ればかなり優しい方だと思います。


 A社在職中、同期同士では割と頻繁に食事会を開いていて、その度に愚痴や相談を言い合っていました。

 A社退社後、僕は同じ会社内で愚痴を言い合える人と出会ったことが無いので、もしかしたら同期達との関係はかなり貴重な物だったのかもしれません。


 現在、僕はA社とは違う県で生活しているので、同期達とは多分、一生合う事はないだろうけど、みんな元気にしていればいいなぁ。




〇めっちゃダンディなオッサン。生産管理部の部長


 オールバックのいぶし銀なオッサン。

 生産管理部の社員のほとんどに『この部長に着いて行くため、A社で働いている』と言わしめるカリスマ。そして家庭も円満。臭くないし、メタボじゃない。ちょっと強面だけど、偉そうなことは言わないし、パワハラなんて言語道断!


 技術部は生産管理部と直接やり取りすることが無いので、なかなかお会いすることはなかったのですが、喫煙所で合うと気さくに話しかけてくれたのを覚えています。

 その関係は僕が精神疾患で休職した後も変わらず。


 今や一般的にも周知されるようになった《うつ病》ですが、当時はまだ余り知られていない病気、ましてや統合失調症なんて言葉はほとんどの人が知らず《精神分裂病》という古い呼び方の方が知られていた時代です。


 にもかかわらず、その部長は喫煙所に合う度、偏見を持つことなく

「具合はどうだい?」

「どんな病気なの?」

「どうやったら良くなるだろうねぇ」


 と極めてに話しかけてくれて、色々アドバイスをくれたり、愚痴を吐かせてくれたりとお世話になった記憶があります。

 人の気持ちを汲み取る力が《カリスマ》と呼ばれる人の特性なのであれば、この人は間違いなくカリスマだったと思います。

 いやぁ、こういうオッサンに私はなりたい。


 裏ではA社が一部上場したら、五十パーセント以上の株を集めて現社長を追放し、この人を社長に……と言う計画もあったらしいのですが、そもそも現社長が存在する限りA社が上場出来るわけないので机上の空論に終わったそうです(笑)




・機械設計部の部長


 ボクが残業地獄に陥っている時、一番一緒に頭を悩ませてくれた上司。部署は違うのに( ;∀;)


 前回のエピソードで援助交際が――と書いていましたが、なんだかんだ言ってこの人の事は結構好きでして。


 残業中、夜食にケンタッキー・フライドチキンを買って来てくれたり(ちなみに僕の地元は超田舎なのでケンタッキーとか車で一時間近く走らないと買えない!)。

 マック買ってきてくれたり(地元が超田舎なためマックとか都会の食べ物。数年前、隣町にできたマックには今でも渋滞が起きる)。

 ミスド買ってきてくれたり(ミスドとかもはや貴族の食べ物。農民が手を出したら手打ちにされちゃいます)。

 アイスクリーム買ってきてくれたり(流石にアイスくらいは売ってました(笑))。


 と言った具合に、見事に餌付けされていた僕なので、この部長には本当に頭が上がりません(笑)

 実際、自分だって忙しい筈なのに、こういう気配りができるのは本当にすごい事だと思います。




・Q技師


 残業地獄の時に一緒に残業をしていたQ技師。

 ボクがA社を辞める際、


○○僕の本名ちゃんが辞める前に飯につれて行かないとアカンな! でひゃひゃひゃひゃ」(最近思い出したんですが、声が鶴瓶さんに似ています)


 と言って連れて行ってくれたのがステーキ屋さん。しかも、超高級そうなお店。

 メニューのお値段は当時二十歳の僕だったら、かなり冒険しないと入れないような金額。さすがに遠慮がちな態度をとっていた僕を尻目に店員さんを呼ぶと


「彼にコレ食べさせたってください」


 と、めちゃくちゃ高いお肉を注文。結論を言えば、

『超、うまかった!』

 柔らかいだけじゃなく、脂の旨味も他で食べた肉とは比べ物にならないほど濃厚でした。

 たしかQ技師、お医者さんに脂っこい物を止められていたのに(本人はチキンステーキ食べてました)わざわざご馳走してくれるなんて( ;∀;)


 以前も少し書きましたが、Q技師、清々しいほどに頭髪が禿げております。

 禿げ散らかってはおりません。

 綺麗に片付いた禿でございます。明るい所に立つとテッカテカです。

 ある日の会議中、突然Q技師がつるっ禿げの頭を手の平で、パチン!(超大音量) と叩いて

「アカン、寝てしまう」

 と言っていた姿は今でも忘れません。

 受け入れてる禿って、カッコいいよね!


 もし将来、自分が禿げたとしても、抗えぬ不条理禿げに対し卑屈になるのではなく、『でひゃひゃひゃひゃ』と笑って受け入れる器の大きなオッサンを目指そうとQ技師を見て思いました。





・I技師


 全方位バトルシステム(誰彼構わず喧嘩してしまうシステム)搭載のI上司。

 彼は僕と地元が同じという事もあり意外と仲良くなって行きました。

 元来、苛烈な性格の人でしたので、僕が病気で記憶力がなくなりミスが増え、その様子を見て怒りだしてしまうのですが、冷静になると怒った事を後悔すると萌え要素満載のオッサンでした。

 同じバトルシステム搭載者の禿上司との違いは、こう言うところですね。


 叱れらつつもI技師との関係は良好。

 僕が原因かどうかは分かりませんが、誰の手にも終えなかったI技師自身も次第に丸くなっていきました。A社きっての狂犬だったのに(笑)

 I技師は、僕がA社を辞めた後、定年直前だったのに退職したそうです。思うところがあったんだろうなぁ。




・専務


 A社の良心。それが専務。

 技術部を総括する立場の人で電子回路設計をメインに全部署を管理している人でした。

 見た目は坊主頭の小柄なオッサンですが空手有段者で眼光が鋭く、ヤクザ映画や時代劇が好きな人で、会話の合間にヤクザっぽい決め台詞と下ネタを挟む楽しい人でした。


 自称・愛されている社長とは違い、飲み会の時などは技術部の社員に囲まれて和気あいあいとしている、本当に部下に愛された人です。

 ちなみに一緒に会社を立ち上げた社長とはめちゃくちゃ仲が悪いらしいです。あの社長の事だから、専務に嫉妬してたんじゃないかな。


 僕が退職する際、仕事のせいで精神が壊れた僕に対して、専務は面と向かって謝罪してきました。その度量には本当に感服させられました。そのうえで、


「クレーム処理の前に、君と一緒にやった仕事は、今後に生かせる、十分に価値のある内容だったはずだ」


 と、励ましまで貰って……いやぁ、器がでけぇや。(病気のせいで、専務とやった仕事の記憶がスッポリ抜けている、なんて言い出せないじゃないか(笑))




・社長


 超優良ブラック企業A社の社長様ですので、僕らのような下卑げびた平社員共の事など馬のクソも同然の扱いをして当然でございます。

 しかしながら器の大きな社長様でございます。下々しもじもに対する慈愛に満ちた情けを忘れる事はありません。


 ゴールデンウィーク明けの仕事始めの日の事です。昼休みになって社長の愛人が沢山のビニール袋を持って技術部へやってきました。そのビニール袋を社員一人一人の机の上に置いていきます。


(何じゃ、ありゃ?)


 そう思っていると、愛人が僕の所にもビニール袋を持ってきました。



「社長からのお土産です」

 ビニール袋を開けてみると、中には殻付きのサザエが一個(まだ生きてる!)。


「ゴールデンウィーク中、海に行った社長が素潜りで取ってきたらしいです」

「は、はぁ。それで?」

「社員の皆さんにお土産だそうです」

「え? これが、お土産? これ、どうすんの?」

で焼けば食べられますよ」


 そう言って去っていく、愛人。

 何を言ってるのかわからない、僕。


 ダメだぁ! こいつらの言ってる事が何一つ理解できねぇ! 僕が精神疾患だからなのかぁ!?

 生きたサザエ一個、ポンと渡されて「お土産です」って、シュールすぎて意味が分からねぇよ!


 さて、これにはさすがの同期達も苦笑い。

 相変わらずの金のかかっていない土産。

 サザエ一個貰ってどうすんだ! っていう疑問。

 ツッコミどころ満載ですが、同期のAさんは家でフライパンで焼いて食べたそうです。A社のある県は海なし県でしたので、海産物が珍しかったのかな?


 ちなみに僕は海あり県出身。場所によっては飽きるほどサザエが取れます。漁業権的に取っちゃだめだと思うけど。

 正直、生焼けや鮮度の低下などのリスクを背負いながら、フライパンでサザエを焼いて食べる気にはなりません。サザエには悪いけど、僕は食べずに捨てました。


 A社の前を流れるドブ川に!




 さて、番外編はここまで。

 次回、D・Ghost、A社やめるってよ。

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