第15話 新年度と共に新たなる犠牲者(後輩)がやってくる。その命、ブラック企業に捧げよ!

<問・新年度に伴い巻き起こるイベントへの対応>


・嵐を呼ぶ部署移動。


 職場復帰して束の間、早くも新年度が目の前に迫ってきていました。そこで行われたのが部署移動。僕とAさんが第二チーム(ファンクションテスターの製造。忙しいけど、あんまり売上上がらないチーム)への移動が決まりました。


 この部署移動をAさんは嫌がっていたのですが、僕はすでにどんな仕事が来てもやる気がない状態。

 しかも統合失調症が悪化していて記憶力がなくなり、左手は腕までメモ書きでいっぱい。さながらカルト映画『メメント』の主人公のようです(十分ごとに記憶喪失するので体中にメモを記しながら事件を追う主人公のお話)。

 人との会話も理解できない……と言うか、理解できない、と言う状況すら理解できないので、何をしても、なんで上手く行かないのかわからない。そんな状態です。


 そこで僕は腹をくくりました。


「拙者、働きたくないでござる! これからは社内ニートを目指すのだ!」


 人としてダメな方向へレベルアップです! いえあ!

 これには僕なりの計画がありました。今のうち体調が回復するまで社内ニートをして、体調が戻ったら転職してやろう、と思ったのです。


 利用されたのだから、利用してやろう。歯には歯、目には目、作戦です。


 すでに僕の悲惨な経緯は社内全体に知れ渡っていましたので、ありがたい事にみんな同情的でした。パソコンいじりながら寝てても、誰も怒りません(/・ω・)/

 とはいえ結果を言ってしまえばこの作戦は失敗。そんな簡単に治るほど精神疾患は甘くありません。




新入社員新たな生贄達が入社。


 四月一日。A社にも新入社員がやってきました。

 電子工学部に一人、ソフト開発部に二人。計三人。彼らについて少しご紹介しましょう。


〇新A君

 電子工学部に入った新入社員。大卒。接客業が好き!?


〇新B君

 ソフト開発部に入った新入社員。専門卒。ダンスが得意。


〇新C君

 ソフト開発部に入った新入社員。専門卒。イケメン。ちょっと性格がきつい。


 電子工学部に入った後輩は大卒なので、専門学校卒の僕よりも年上です。ちなみにソフト開発部に入った二人は専門学校卒なので僕よりも一個下。

 さてブラック企業に入って散々な目に合い続けている僕です。きっと新しく入ってくる新入社員だって後輩とはいえ年上。この流れだとクソ生意気な後輩が出来てなおさらボロボロになるかも……なんて思っていましたが、実際のところ新A君は結構いい人でした。






《解・新年度に伴い巻き起こるイベントの行く末》


・部署移動、Aさん泣くほど嫌がる。


 さて部署移動が命令された際、同期のAさんがめちゃくちゃ嫌がったと書きましたが、それはそれは猛烈な嫌がり方でした。号泣し、仕事辞めると大騒ぎするくらいです。


 その状況を目の当たりにした専務と部長が慌てて面談を行いました。面談は定時を過ぎた六時ごろから始まり、七時過ぎまで続いていました。この頃、七時には帰っていた僕もさすがに心配で、その日は同期のBさんと共に面談が終わるまで待っていました。

 ちなみに同期のCさんは休職していました。こちらの詳細は後日。


 そして面談を終え、泣きはらした顔で戻ってきたAさん。専務と部長に説得されて結局A社に残る事にしたそうです。とはいえ部署移動は変わりません。

 このように”辞めたい”という人を無理やり引き留めるのもブラック企業あるあるです。

 職業選択の自由? そんなもんA社の社員奴隷にはねーんだよ!


 ちなみに元々第一チームにいた僕ですが入社半年後にシレっと第二チームの手伝いに回されたまま、気が付いたら部署移動していました。

 泣く間も与えぬ無慈悲な部署移動です。


 さて、僕が退社後もAさん、BさんはA社に残り続けたそうです。僕が退社後に二人から聞いた話なのですが、Aさん、Bさんが専務と飲みに行った際、


「二人が自分の部下じゃないと、もう仕事を続ける気力が無い。せめて自分が定年するまでは会社に残って欲しい」


 と専務からお願いされたそうな。実際二人ともすげー優秀で人格者だったから、そう言われるのもわからんでもないです。けど、多分、A社を辞めた方が二人は良い人生を歩めると思う。




・早くもナーバスになり始める後輩。


 電子工学部に配属された後輩、新A君。彼は第一チームでしたが机の位置が近いという事もあって、それなりに交流がありました。社内では後輩なので礼儀正しく、とはいえ僕にとっては年上なのでお互いに敬語で話す、というぎこちない先輩後輩でしたが関係は良好でした。少々、気が小さいけれど真面目な青年、と言うのが彼に対する印象。

 とはいえ、僕はほとんど事務所にはおらず、工場での作業がメインだったので、業務でのかかわりは少なかったです。


 そんなある日、夕方になり今日も立派に社内ニートしつつ最低限の業務はこなしたので、定時で帰ろうと工場から事務所へ戻りました。で、事務所を見回してみると社内に新A君が居ない。どうしたのかな、と思って第一チームの同期、Bさんに聞いてみると、


「新A君、キレて帰っちゃった」

「へ? どういうこと?」


 話を聞いてみると、どうやらAさん、Bさんと新人A君の間でコミュニケーション不全が起きていたようです。ま、簡単に言えば過度なイジリ。要約すればパワハラです。

 新人A君のやる事なす事に

「遅い」「使えない」「下手くそ」

 とプレッシャーを与えていたそうな。多分、二人の雰囲気だと冗談半分、本気で言っていたのでは無いと思うんですけど、新入社員にとってそう言った言葉はきついはず。まともに受け止めるような真面目な人にとっては特に。

 二人にいろいろ言われていた新人A君、おもむろに立ち上がるとそのまま帰ってしまったそうな。


 「それは同期達の方が悪いがな」と思いましたが、当時の日本にはセクハラと言う言葉は存在していたけれど、パワハラって言葉は存在しない時代(多分)。物の善悪が時世によって左右されるのはよくある事ですが、とはいえ、つい先日まで休職していた僕としては新人A君に同情せざるを得ません。


 あ、こう書いていると、同期のAさん、Bさんが早くもブラック企業に染まりパワハラ野郎にスキルアップしたように見えますが、厳しいだけじゃなくてちゃんと後輩のフォローもできる人たちだったんですよ。

 とはいえ、パワハラは悪です。無駄だし、人を動かすには効率が悪い。


 さて、新人A君との付き合いはA社退社後もしばらく続きました。先輩たちのシゴキのせいで度々ナーバスになり仕事の効率も大幅ダウンすることがあり、そんなとき同期のAさんかが僕に電話をよこしました。


「新人のA君が病み始めてるから、相談乗ってあげてくれない?」

「えー、ボク、とっくにA社辞めてるんですよ(笑)」

「そこを何とか頼むよ。僕もBさんも新人A君に警戒されちゃって(笑)」

「それ、二人が悪いんじゃん(笑)」


 怒らない僕を新人A君が慕っていたのは分かっていましたので、こんな感じで退職後も度々、新人A君の話を聞く機会がありました。こういった時、後輩の体調を気にかけて、自分にフォローできない所をフォローできる人(この場合は僕)に頼るのは先輩として悪い判断ではないと思います。

 だが、何度も言うが、そもそもパワハラすんな。


 ちなみに新人A君は一年ほどA社で働いた後に退職。その後、ゴルフ場の職員としてバリバリ働いてたそうな。元々接客業が好きだと言っていたので、彼にとっての天職に着けたのであれば良いな、と思います。


 さて、今回はこの辺で。

 次回はブラック企業とイジメを書いていこうと思います。そして転生系主人公にならって、僕の戦闘スキルも紹介!

 ステータス!! オープン!!

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