第12話・中編 新入社員、早くも休職。そして異世界(ブラック企業)に転生(就職)をしたオレはチートスキルを手に入れた。

《解・精神疾患で得た物 ~私の頭の中の鶴光つるこう(でおま)~》

 こいつがブラック企業異世界就職転生して手に入れたチートスキルだ!




特殊スキル一覧疾病一覧

〇統合失調症

 ガチのチートスキル。時代が時代なら、エレキテルを発明したり、百年戦争を終わらせたり、神に転生できたりするらしいけれど、現代医学の前では投薬と入院を余儀なくされる。

 一昔前だったら目の上の辺りにアイスピックを突き刺して前頭葉を傷つけるロボトミー手術の対象。


 僕が取得罹患したスキル症状は、神秘的なお告げ(幻聴)、神秘的な者に触れられる(幻触)、幻想的な景色が見える(幻覚)など神秘的な経験症状が現れました。

 また、自分の敵となる勢力の存在を察知(ただの疑心暗鬼。敵なんていません)する能力も目覚め始めます。

 ちなみに、このスキルは自己完結的に作用する能力であり、他人に影響は与えない。つまり、



 何より大変だったのが、ことです。

 自分で言うのは可笑しいですが、元々コミュ力は決して低い方ではなかったんです。会話の中や些細な所作で相手の気持ちを汲んだりすることが好きでした。まぁ、単なる気ぃ使いいってだけかもですが。


 ただ、病気が悪化していくにつれ、思考のアルゴリズムが変化してしまう、と言いますか、認知能力が低下してしまう、と言いますか……上手く説明できないのですが、人と上手く会話のキャッチボールができなくなります。一方的に投げすぎてしまったり、かと思えば不意のボールを受け止められず、パニックを起こして何も話せなくなったりとか。

 今まで見えていた相手の気持ちもわからなくなっていきました。昔の自分を思い出すと、これはすごくショックでした。人との交流が楽しくない。マジで友達減りました(笑)


 今でも人の目を見て話すのがちょっと苦手なのは、これの影響があるかも。


 現在、ほぼ統合失調症の症状はありません。症状が現れても、極軽度な物です。比較的早く回復できたのは運が良かったのかもしれません。まぁ、コミュ障は治りませんけど、表に出る努力はしています。


※蛇足ですが、統合失調症を患っている人の中には時折、歴史に名を遺すほどの天才が現れるそうです。それに凶暴になる人は統計的に少ないらしい。この症状に対しての偏見が無くなって、理解が広がればなぁ、と思う次第です(僕の場合は後天的な物だから天才じゃなくて、ただの病人でしょうけどね。あな口惜しや)。




〇自律神経失調症

 究極のステータス異常スキル。

 スキルを使用すると、対象に体温変動、めまい、立ち眩み、ふらつき、吐き気、寒気等の様々な症状を起こさせ、ひどいと指一本動かせなくなるまで(ほぼ金縛り状態)追い詰める。原理は人間の温度調節機能(交感神経、副交感神経)の動きを滞らせる事で起こる。

 このスキルは自己完結的に作用する能力であり、他人に影響は与えない。つまり、


 自律神経失調症が一番辛い頃も仕事はしていたのですが、這うように仕事をして、家に帰るとベッドから動けず、翌朝どうにか目を覚ますと風呂場に這っていき、風呂場の床に転がってシャワーに当たる(体を洗う力すら入らない)。なんて日々を送っていました。今思うと、よく回復したもんだ(笑)


・すい骨脳底静脈循環不全症

 自律神経失調症からの派生スキル。後頭部の静脈の流れが悪く、結果的にめまい、さらに悪化すると吐き気が現れる。ちなみに、2020年6月某日現在、キーボードをタイプする振動ですら眩暈が誘発されています。

 素面しらふでも千鳥足(笑)




〇パニック発作

 過呼吸、吐き気、冷や汗、悪寒、離人症(自分が自分でない感覚)、そして何より根拠のないを与える。マジ怖い。

 起こりやすいのは電車で移動中、人込み、高速道路などで車の運転中など

 恐怖が与えるストレスが原因なので、ストレスを減らしてリラックスしてれば症状は緩和します。

 が、しかし! 発作が出るたびに発作の恐怖が心に沁みつき、と言う不安が次の発作の原因を作り、治療を困難にさせます。

 このスキルは自己完結的に作用する能力で(以下略)


 ちなみに現在は完治。

 電車や普通の車の運転も問題なくできるようになり、マニュアルのトラックだって落ち着いて乗りこなせるようになりました(そこまでする必要なない!)。




〇強迫性障害

 潔癖症、加害恐怖、確認行為、異常な数字へのこだわり(恐怖)、など症状は多岐にわたる。本物の呪いと言っても過言でない症状がでる。人によっては、これらの症状を緩和するため的な対処法を編み出す場合がある。ただしも強迫性障害が引き起こすの一つなので儀式をすればするほど悪化する。


 ちなみにこの病気とは今も格闘中。僕にとってのラスボス。

 調子にもよりますけど


・自分の吐いた息に毒が混ざっているような妄想(加害恐怖+統合失調症)

・触れた物を傷つけるんじゃないか、と言う妄想(加害恐怖)

・抜けているコンセントを目の前にして、本当にコンセントは抜けていないのか思い悩む(確認行為)


 などなど、自分でも馬鹿らしいと理解しているのですが、恐怖が先だってコントロールが効かなくなります。

 せっかく書いた小説も「消さないと悪い事が起きる」(加害恐怖、儀式行為)と言う妄想が生まれて何度消したことか。


 最近、よく眠れていると、少し改善する兆候を見つけました。

 この病気はぶっ潰す!




〇躁うつ病

 前述した通りテンションぶち上げパーリーピーポー状態と、もう僕なんてモヤシでいいです、の両極端な状態を行き来する面倒くさい体質になります。




〇運動性チック?

 瞬きや咳払い、声など、突然、繰り返し出てしまう症状です。医学的にチック症は18歳以下の発症を定義しているらしいので、当時二十歳頃の僕は正確には該当しません。

 が、しかし。症状は完璧に発露しました。常に上半身を揺らすようになります。ヘドバン状態。いえあ。


 ちなみに、こちらは完治? というか自然と症状が薄くなっていき、目立たなくなりました。

 ヘドバンはヘドバンしたい時にヘドバンするにかぎります。

 最近知りましたが、強迫性障害と併発する事もあるそうです。こわっ!



〇睡眠障害

 いわゆる不眠症。僕の場合は入眠しずらく、極端に眠りの質が落ちて、浅い眠りしか得られなくなりました。その結果得たスキルが……


・目を開けたまま眠る! 薄目じゃありません。完全に開眼してます。

・部屋の前を歩く猫の足音に気づく。


 殺し屋みたいな眠り方です。疲れ取れません。あと、目を開けて寝るのは気持ち悪がられます(笑)しかも、すっごい目が乾く。

 あ、最近は割と普通に眠れています。




〇閉所恐怖症、暗所恐怖症

 これは遮光カーテンを被った作業をやってたせいだと思います。一時期、明かりを付けないと寝れなかったのはこのせいだと思う。

 あと、狭い車の中とか、遊園地の乗り物とか、すべて怖かったです。


 今は完治。真っ暗じゃなきゃ寝れません。

 また体調改善と共に本来の柔軟な体と、自在に外せる肩関節を使って天井から床下まで、どんなに狭い所でも三十センチ角の穴があれば何処へでも行ける機動性を獲得(これ、本当に出来ちゃうのよ。人間離れしてきた気がする……(´・ω・`))。


 いったいどこでそんな能力を使うんだって?

 弊社、D・Ghost worksでは脱獄案内人、密室殺人代行、一般住宅の屋根裏工事など幅広いサービスを提供しております。(`・ω・´)キリッ




〇離人症

 離人症とは自分が自分でなくなったような感覚に陥る事を指します。まるでテレビゲームのキャラクターを操作しているような、幽体離脱しているような、そんな錯覚が突然やってきます。ひどい時は痛みを感じなくなる(鈍くなる? 理解できなくなる?)事もあり、その結果、不安で口の中を噛み切ったこともあります。


 結論を言えばそういうが症状を悪化させている一面があるので、無視して放っておくだけでだいぶ改善しました。あと、寝不足、疲れ、ストレスを避けて、すぐに休息をとる事。

 と言うわけで今は完治済み!




〇白昼夢(多分、統合失調症の症状?)

 頭の中で想像していることが目の前に現れて、自分が現実から離れていきます。この想像? 妄想? が止まらなくなって現実世界での活動がままならなくなります。誰でも妄想くらいすると思いますが、その妄想がより深くなって、妄想に合わせて体が動いたり、声が出たりする状態です。

 いわゆるトリップ状態ですね。


 最近じゃ、ほとんどなくなりましたが、昔の嫌な事を思い出すと、たまーに起きるのが厄介です。




〇聴覚過敏

 耳が良くなるわけではありません。

 人間の脳と言うのは高性能なもので、いわゆるが搭載されているそうです。賑やかな飲み会の場でも人と会話が成立するのは、その機能のお陰だそうな。

 聴覚過敏は、簡単に言えばが故障して、全部の音がMAXで聞こえているようなものです。車の振動音、エアコンの風の音、過敏なときだと自分の咀嚼音すら聴覚が過敏に捉えて、周りの音が判別できなくなります。

 おかげで飲み会が苦手になってしまったのです。まぁ、お酒飲めないし、仕方ないか……




〇汚言症?

 こちらもチック症の症状の一つ、音性チックと言うものです。最近知ったのですが、心じゃなくて脳の病気らしいですね、これ。

 常に暴力的、攻撃的な言葉、もしくは性的、猥褻的な言葉を本人の意思とは関係なく垂れ流す症状です。まるで『ジキルとハイド』のようですが、いわゆる多重人格(解離性人格障害)とは違います。僕の感想ですが、本来の自分と違う思考展開が生まれて、それを制御できなくなる感じがします。

 この症状の存在自体は知っていたのだけれど、自分がひたすら放送禁止用語を垂れ流す人間になろうとは思いもよらなんだ。変態ではないか!!


 いうなれば自分の頭の中に僕ではない、笑福亭しょうふくてい鶴光つるこう師匠のようなオッサンがニタニタしている状況なのです。そして僕の頭の中の鶴光は(かつて多くの若手アイドルに被害を与えた本物の鶴光師匠と同様)、僕が見聞きしたあらゆる事を下ネタへと繋げて、僕に言わせようとする、恐ろしい言葉の錬金術師でもあるのです。


 しかも、もう一人、僕の意思に反してあらゆる出来事を暴力的、猟奇的な方向へ思考展開する『羊たちの沈黙』でお馴染みの人喰い殺人鬼ハンニバル・レクターみたいなオッサンが、僕の頭の中で四六時中、料理用ナイフを研いでいます。

 例えばこの状況で、テレビを見ていたとしましょう。画面の中ではスタイルの良い女性タレントが果物を紹介しているとします。


女性タレント『見てください、こんなにたわわに実って……』

ボク「たわわ……枝がたわむって意味だからパイナップルにその言葉を使うのは妥当なのかな?」

下ネタ的思考「でっへっへ、本当においしそうでおますなぁ」

暴力的思考「あっはっは、本当においしそうだねぇ」

ボク「あの、静かにしてもらえます?」


 そして興味深い事に、僕自身、下ネタや攻撃的な言葉を考えたいわけじゃないし、言いたいわけでもないんです。けれど吃逆しゃっくりみたいに出てくる。

 昔ヘビーメタルバンドを組んでいた時に知り合ったギタリストも同じような雰囲気? があって、彼は凄く優しくて気さくなナイスガイにもかかわらず、下ネタとB級ホラーと猟奇殺人の話が大好きな人で当時はすごく気が合って、よく一緒にご飯食べながら凄惨な話題を楽しんでいたのですが、僕らは少しおかしかったのかも。


 この経験から学んだ面白い事がありまして、『私』と言う概念は思った以上に曖昧で、やわで、大した事がないのだと感じました。曖昧な『私』に対する執着が『苦』を生む、なんて仏教めいたお話ではありますが、精神疾患から立ち直るためには重要な気づきであったと思います。


 ちなみに汚言症は他の病気の症状が回復するうちに自然と消えていきました。比較的、頭の中が静かになりました。

 今や下ネタなんて恥ずかしくて口に出せませんわ。オホホ。






ヽ( ・∀・)ノ● ウンコー




 以上が僕がブラック企業で得たスキル一覧……失ったモノばかりじゃないか!!

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